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体験記

超ストイック!気難しさは業界随一!の作家さんとの、緊張の初対面・・結果は? アシスタント体験記第33話

2018/07/25

さて またもったいぶってしまいました。 業界内で「厳しそう」「怖そう」と評判のある作家 Mさんのところへアシスタントに行くことになった私。他にも数人新人アシがいて、編集さんの引率の元 住居兼仕事場へ。作家さんはネームの修正作業に没頭中。眉間にしわを寄せながら格闘する作家さんにビビりながらも我々はしばらく仕事場で待機。

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いくら新連載とはいえ、私含めてアシスタントが全員で6人。少し多いんじゃないかと思いましたが(そのワケは後でわかります)、先輩さんたちの仕事ぶりや過去の単行本などで絵柄の確認をしつつ待つこと数十分後、修正を終えたMさんが作業部屋に入っていて、いよいよ本格的な対面の時。

 

 

緊張の初対面!その第一声は‥?

 

 

「どーもー!おまたせ! いやーまいったまいった、急にネームのおかしいとこ見つけちゃってさー。シャレになんないよなー。もう作画入ってんのにさ。信じられる?いやーホント、待たしちゃってごめんねー!」

 

(・・・・。)

さっきまでの緊張が音を立てて崩れていくようなあまりに「チャラい」あいさつ。

「頑固一徹、気難しい、気分屋、あそこに行くなら気をつけろ」周りにさんざ脅されて最大級にビビりながら対面した作家Mさんの実像は、いかに他人からの情報があてにならないかということを証明するかのような「実に人当たりのいい、明るく元気なオジサン(失礼)」だったのです。

 

「いやーごめんね。急な話でビックリしたでしょ? なんせ新連載だってのに人が集まんなくって‥。いや以前の連載まではいたんだけど今回のは人数必要なうえにチーフが自分の連載持っちゃったもんだからいなくなっちゃって‥。でも今どこも大変らしいね。しかもまるっきり初心者じゃ困るからある程度技術持った人をってなるとなかなか見つかんなくて・・いや、引き受けてくれてありがとう!」

こちらが何も言わぬうちからまーしゃべるしゃべる。今までの緊張感は何だったんだってくらいの明るさに、かなり拍子抜けしたまま改めて自己紹介、仕事の手順など伺い作業開始となるのでした。

ただ・・・・ただですね。いやもちろん、作家さん本人は凄くホントに明るくて人当たりの言い、感じのいい方でした。サラリーマン、しかも営業マンをやっていたとかで、なるほど腰の低さ、会話の盛り上げ方は凄く上手で話してて本当に楽しい方でした。ではなぜあんな「厳しい」「怖い」「行かない方がいい」などと言う噂が立ったのか、その理由は・・後で気づくことになるのです

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いよいよ作業開始!と思いきや・・

 

さあ、一通りの説明が終わりいよいよ作業開始です。今回も新連載なのでページ数も多くしかも絵柄も緻密なので時間がかかりそうです。最初の印象では明るいいい人そうに映ったMさんも、仕事となればどうなるかはわかりません。それなりに集中して渡されたコマに取り掛かりました。

とりかかってしばらくした後、同じ部屋で仕事をしていたMさんが「あっ!」と小さな声を上げたかと思うとそれまで饒舌に語っていた世間話をぴたりと止め、別室にこもってしまいました。

割と密度の濃い背景ばかりだったために我々アシスタントがMさんの指示を必要とするまでにはかなりの時間があったので、しばらくはそのままになっていましたがあまりに長い時間帰ってこないのでそろそろみんなの仕事もなくなりかけてきました。一番最初に手持ちの仕事がなくなった私が代表してMさんのいる部屋へ様子を見に行くことに。

部屋の前まで行くと、中から話し声が聞こえます。と言っても部屋にはMさん一人しかいないはず‥。聞き耳を立てると、何やら「あのコマのあのシーンが‥」とか「やっぱさっきのだとあれがこうなって・・」

どうやらさっき帰ったばかりの編集さんと、再びネームの打ち合わせをしているようなのです。

 

そのことを仕事部屋に帰って先輩アシさんにつたえると、「あーあまたか・・」と少々あきれ顔。実は、この仕事場に入ってくるとき私が見た光景は、まさしく「氷山の一角」。とにかくこのMさん、自分のネームに一切の妥協をしない。細かな設定や話の流れに少しでも違和感を感じると、そのために延々と悩み続けそのたびに作業がストップしてしまうともしばしば。

しかもそれがものすごく話に影響のあるものならわかりますが、正直「そこ、大事?」と言いたくなるような場面 たとえば

酔っぱらいのエキストラが主人公の後ろで歌ってる歌を決めるのに数時間。←話に全く関係なし。

部屋に飾ってある花を何の花にするかでまた数時間。←同じく全く影響なし。

しかしMさんにとってはものすごく重要なようで、このMさんという方は無類の映画好きで、話を考える時には常に頭の中にBGMや何らかの「音」が流れてるそうです。つまりMさんの頭の中でだれも見たことがない「映画」が上映されてるのだそうで、その空気感や雰囲気にネームがあってないと、どうも先へ進めないということだそう。

そう、Mさんは「厳しく、仕事に妥協を許さない人」であることは事実でした。ただ、それは全て「自分自身」に向かっているもので、作業内容や作画に関してはある程度描けていればそこまでうるさく言われませんでした。

最もほとんどがトレースで、写真もご自分で撮影してきて、「これ!」と決めたもの。大体その写真の通り描けばOKということで、自分の不手際で怒られるということはなくその点は安心できました。

しかしMさんのあまりの妥協のなさは仕事にも悪影響は出てるようで、作業開始日がずれるのは日常茶飯事、一番ひどいときは4日作業日があるうち三日はネームができず最後の一日徹夜で描き上げたことがあるそうです。でもそうなると結構作画的にはスピード重視の突貫工事になってしまい本末転倒だと自分でも言っているようでした。

週刊連載という、決められた枠と時間の中でそのくらいの職人肌の作家さんがこなしていくのはかなり無理があるようですね。新連載始めたばかりとはいえ、少し多すぎなのではと思うくらいにアシスタントの人数が他より多かったのは、締めきりギリギリまで作業が伸びたときの「人海戦術」用だったんだな・・・・とその時気づきました。

その後もMさん、さまざまなことが気になって、ネームもはかどらなければ当然自分の作画も滞ったまま。見開きの街景、俯瞰の夜景など、密度の濃い背景ばかりがそれでもどんどん埋まっていく中、作家さんの絵が入らなければそれ以上進まないという状況に。

このあたりからだんだん、「職人作家」の苦悩を、目の当たりに見せられる事になるのです・・。

 

 

つづく

(この体験記は不定期更新となります。次に続いたり、しばらく後だったりします。ご了承ください。すぐ続きがお読みになりたい方は、こちらをクリックしてください。)

見てるだけで辛い‥ザ・職人作家の苦悩 アシスタント体験記第34話

 

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