つづき
仕事の打ち上げでスタッフ全員(と言っても三人)と朝までカラオケで盛り上がり、始発でそれぞれ家路についた。疲れもあって眠りこけていた私をたたき起こした一本の電話は、作家Tさんの担当編集者の方からだった。打ち上げが終わってから一度も家に戻ってないという・・。夜中にも再び「まだ帰ってない」という電話。Tさんは女性でしかも人妻。旦那さんも漫画編集者で、某有名作品を立ち上げたことで業界では有名な方。
私は「まさか、何か事件にでも巻き込まれたのでは・・」と心配するが…?
お騒がせ作家の片りんを見た
結論から言うと、すぐ見つかりました。
ただ・・(れっきとした「奥様」で、旦那さんは某有名編集)の、彼女が「いた場所」は・・なんと「別の部署の編集さん(独身男性)の部屋」だったのです。
つまり・・エーとまあ・・言いにくいのですが、はっきり言って「倫に不ず」ってやつです(笑)。ご自身では自分のことを「コミュ障」だとおっしゃってましたが、そっちの方のコミュ力には結構自信おありなようで‥。最初に書いたように、もともとのビジュアルはそこそこいい方なので、化粧してビシッとすれば「なかなかにイケる口」になると思います。はっきりと見たことはありませんが。
あとからわかることですが、実際「そっち系の話(察してください)」になると途端に生き生きと饒舌になるのです。普通女性作家さん(しかも若い)となると、「そっち系」の話はやはり自重気味になります。男同士だとやたら盛り上がったりしますが。私が最初にお世話になった女性作家さんも、1秒もそっち系の話どころか、恋愛話さえした記憶がありません。まあそれ以前に私の方にそんな余裕なかったってのが一番ですが。
しかしこのTさん、普段はあまり積極的にしゃべらない人なのに、我々が男性であるにもかかわらずなかなか女性からは言い出しにくいはずの話まで結構積極的にしてきます。ああいう時って逆に男は引いてしまいますね(笑)。
特に徹夜仕事になって気分がハイになってるときはまーすごかった(笑)。そんなことまでバラしていいのと、こっちが制御したくなるほどでした。実際私がお世話になってた約一年 何人ものお方とお付き合いをされてたようで、その都度 いろいろ夫婦間で問題になってたりしました。
それでも「離婚」という話にならないのは、実は旦那さんの方も あまり大きな声で文句言えるような人ではないようで・・。ようするに「どっちもどっち」夫婦だったみたいです(笑)。
とにかくまあ、こういう話題で問題起こしたり、相手のところに誰にも内緒で仕事ほっぽらかして行っちゃうような方で、なかなかに編集さんも相手するのが大変そうでした。一度帰りの電車が一緒になることがあって、さんざん愚痴を聞かされました。それでも、その編集さんもTさんに会うときは平身低頭、機嫌を損ねないよう気を使い、ほめちぎり、何とか仕事へやる気を向けさせようとする姿は「さすがにプロ」だと思えましたけどね。
仕事の方でも結構な事件が‥そして私との関係もさらに微妙に
そんなこんなでいろいろ周りに心配をかける作家さんでしたが、肝心の仕事、連載漫画の方は順調でそこそこ人気もあり、長期連載へ向けて「さあますますがばっていこう!」とした矢先、今度はその「仕事」の方でかなりな事件がありました。
あまり詳しく書くと誰だか特定されてしまうので詳細は省きますが、そのことでTさん自身、しばらくかなり凹んでしまっていました。もともと精神的には結構不安定な方で(だからフラフラしてしまうんですが(笑))したが、このときはもう、話しかけるのが以前に増して難しくなるくらい神経がピリピリしていました。
(断っておきますが作家さん自身が悪いわけではありません。詳しく書けないので説明しにくいですが、別に法を犯したわけでもなく、反社会的な行為を犯したわけでもありません。当然警察のお世話になったとか、そんな問題ではありません。あくまで業界内でのお話です。)
その結果、仕事中もまたあまり話さなくなりピリピリとしたムードのまま作業する形に。私ともう一人のアシであるH君が一生懸命明るく、話を盛り上げようとするのですがまた再び「のれんに腕押し」状態へ。こうなってくるとこちらの方も少しまた感情的になってしまいます。直接口には出しませんが、掛け持ちで以前は言ってた仕事場へ行ったときなどはどうしても不満がこぼれてしまってました。できるだけ他の現場での愚痴は言わないように心掛けてはいたんですがね‥。その仕事場も男ばかりで、私がTさんのところへ入り、Tさんがなかなかの美人だと伝えると現場での裏話などを根掘り葉掘り聞かれるもんだから(笑)。
でもそのうち、私がその現場での愚痴しか言わなくなったりOさんという方の「不思議なところ」を語るにつれてだんだん聞かなくはなっていきましたが。
それでもとにかく連載は続き、私も個人的な思いは抜きにして最後までやり抜きました。とうとうお互いに打ち解けることもなく連載は終了。現場は解散となりました。今でもTさんは現役で頑張ってらっしゃいますがそのあと呼ばれることはありませんでした(笑)。いやきっと私にも悪いところはあったでしょう。ちなみにそれからしばらくしてご主人とは離婚なさったことを知りました。 原因は知りません。
ただそのあとも 名前を出せばすぐわかる有名作家さんとさっそく「浮き名」を流しており「相変わらず、ご健在の様で」と納得するやらなにやら(笑)。
まあいろんな作家さんとお付き合いしてきた中でも、この方も何かと印象に残る「個性的」な漫画家さんだったことは、間違いありません。またいつかお会いできる日があれば‥いやないかな。あったとしても覚えてないかもしれませんね・・。
つづく
(この体験記は不定期更新となります。次に続いたり、しばらく後だったりします。ご了承ください。すぐ続きがお読みになりたい方は、こちらをクリックしてください。)
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