編集さんも普通の人間・・だからこそいろんな人がいる。私が会った変わった編集さんたち

cancan01IMGL1558_TP_V 所見

今まで、作家さんやアシスタント仲間での「変わった人」を紹介してきました。さて今度は「編集さん編です。 漫画家を目指すものとして、また「なった後」も時には味方、時には「倒すべき敵」となる、不思議な関係。仕事相手とはいえ、やはり信頼関係も大事。自分の作品を評価してくれる人に担当してもらいたい・・それが人情というものです。

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もちろん、担当につく場合はある程度その作品が好きで、方向性を見極めたうえでついてくれるのが基本です。ジャンル的にも全く興味のないもの、知識のないものを担当してもアドバイスのしようがない場合があるからです。

もともと、趣味や方向性が同じ人が担当についてくれたりするので感性は似たようなものかもしれません。だからというわけではないかもしれませんが、「変わった作家さん」には、「変わった編集さん」がついたりするのかな・・と思ったりします。あくまで私見ですが。今回は、私が会った「少し変わった」編集さんについて紹介します。

 

何をされても動じない?自称「サンドバッグ」な編集さん

 

ある女性作家の担当編集さん。Kさんとしましょう。この方もなかなかに業界では有名な人。

実力はある人で、結構な人気作も世に出しています。でも編集部内の地位的なことで言えば・・そんなでもありません(笑)。その理由は後程。

担当の作家さんは、ファミレスでネームを書いたり打ち合わせをする人(業界では結構います)で、その日も打ち合わせ、そしてネームの直しのため近くのファミレスに作家さんと二人で行くことに。

そしてあまりネームがうまくいかなかったのか、空気はだんだん険悪なものになっていきます。何度目かの直しのあと、作家さんが煮詰まってしまい、その場で顔をテーブルに突っ伏して、とうとう泣き出してしまったのです。

それでもその担当Kさん、全く意に介さず。ゆっくりコーヒーを飲み、目の前のネームを再確認。

はたから見るともう完全な痴話げんか。目の前で女の子が泣いてるにもかかわらず、平然とコーヒーを飲むKさんの姿に、周りの視線は集中したそうです。(彼女が泣いてるのに、気にせずコーヒー飲むなんて最低な男だな!)と周りからは見られてたでしょう(笑)。でもそんな視線にめげるようなKさんではありません。

しばらくして泣き止んだ作家さん、おもむろに起き上がり、泣きはらした目でKさんに訴えます。

 

「すいませんKさん、Kさんのこと一発殴っていいですか?」

 

もうこの時点で充分ぶっ飛んでる注文なんですがそれを聞いたKさん、たいして驚く様子もなく

「いいですよ、どうぞ」

そしてその場に立ち上がった女性作家さん、テーブルの向こうのKさんの右ほほを力いっぱい平手打ち。それこそファミレス中に破裂音が響き渡るほどのすさまじい平手打ちだったそうです。その後はまたテーブルに突っ伏して嗚咽。

思わずその場にいた客、店員全員からさらに集中した視線が。もはやドロドロの恋愛ドラマのような展開です。 実際はネームがうまくいかない漫画家さんがストレス発散のために編集さんを叩いただけなんですが(笑)。

 

「そんなこともありましたねえ」と懐かしそうに笑う作家さんとkさん。編集部主催の飲み会でのお話ですが、引き気味に話を聞いていた私に、「いやいや心配ないですよ。こんなのよくある話ですから。」と何のフォローにもなってない追加情報を(笑)。

「よくあるんですか?」「はい。私がそういう人を引き付けるんですかねえ。でもいいんです。編集なんて作家さんのサンドバッグのつもりでやらないといいモノできませんから」と。ある意味「達観」してる・・。これも「プロの姿」なのかと、少し感心しましたね。

確かにこの方の担当する作家さんは、結構「アクの強い」方が多かったですね。名前は言えませんが。「異才」とか「鬼才」とか言われる人が多いように思います。ご本人がそういう作家さんが好きなようですね。わかりやすく言うと「性格が少し破綻してる」方が多い。

「だから出世しないんです。」と笑って言います。確かに編集サイドで言えばそういう「アクの強い」作家さんより、万人受けする作家、作品のほうが重宝がられるし、そういう作品を生み出す人のほうが出世するそうです。Kさんの作る作品はいわゆる玄人ウケ、業界内では天才といわれてる作家さんの作品が多いです。でもそういうのは一般ウケはしないんですね。私自身もそういう作品のほうが好きですけど・・難しいものです。

 

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とはいえ、結構危ない目にも・・

 

そんなkさんですが、やはりそういうスタイルでやってると結構「危ない目」にも遭ったそうで・・。

この女性作家さんとは別に、Kさんはもう一人男性作家さんの担当もしていました。この作家さんも業界内ではそれはそれは変わったというか、いい感じに性格破綻してる人。漫画は面白いんですが既存の枠にあまりにとらわれなさすぎる作風で、他の雑誌ではやはりあまり仕事をさせてもらえないという話でした。でもそういう人が大好きなKさん、自ら編集長を口説き落として連載させてもらったそうです。

なかなかの無頼派でアシスタントにも逃げられ、結局連載作家なのに一人で作品を描いているという珍しい人。Aさんとしましょう。

ある日、Aさんの仕事場へ打ち合わせに向かった時のこと。いつものように玄関の呼び鈴を鳴らし、いつものように仕事場へ入ったKさんが目にしたものは・・「金属バット」を振りかざして構えているAさんの姿でした。

「な・・・なになさってるんですか?」驚いたKさんが問いただすと、

Aさん「ストレスたまったら殴っていいんですよね?」

 

Kさん「・・・いやいやいやいやいやいや!そ、それはさすがに・・ないですないです!かんべんしてください!・・・」慌てて制止するKさん。

 

「・・冗談ですよ、冗談。」と言いながらバットを下ろすAさん。

「ま・・またまたあ・・冗談きついんだからあ・あはははは!」といいながらKさんは、Aさんがバットを下したときの死ぬほど残念そうな顔を見逃しはしませんでした。

「あれは本気だったと思うよ。俺、よく今でも生きてられると思うよ。あははは。」

 

笑いながら話すKさんに、編集さんの大変さを見た気がしました(笑)。

 

その他にもやたら「アツい」編集さんとかも結構います。

「どんなにボツ食らわしてもさあ、めげずにネーム書いてくる新人見ると「こいつのこと何とかしてやりたい」って思うんだよねえ。」

やはり編集さんも人の子。作品以上に、「こいつと仕事したい」と思わせてくれる何かがあれば「簡単には見捨てない」そうです。

もちろん、最低限の礼儀は必要ですけどね。

 

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