『極主夫道 』  ネタバレ 感想レビュー

アイキャッチ2 レビュー

また一つ「人気漫画」を見つけたのでレビューします。

 

新潮社「くらげバンチ」で連載中の おおのこうすけさん作「極主夫道」です。

 

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くらげバンチ「極主夫道」

 

ネタバレありますので、先に作品を観てからにした方がいいかと。

 

 

 

 

 

あらすじ

どこにでもありそうな2階建てアパートの洗面所。いきなり画面いっぱいに、あちら系の方々が好む絵柄をあしらった筋肉質の男の背中が現れる。

正面に回ると、まず街で出会いたくないタイプナンバーワンともいうべき強面の男の顔が。おもむろにグラサンをかけ、しょっぱなからバイオレンスな展開が…

 

と思いきや、男はそのままエプロンを付け、台所で調理を始めたのだ。しかも作っているのが、「犬」だか「熊」だかわかんないがとにかくデフォルメされた動物の顔をかたどった、なんともかわいらしいいわゆる「キャラ弁」。

満足げに調理を終えると、男はそのキャラ弁をスマホで撮影しまくっていた。

そこへいきなり、どこから出てきたのかわからないがこの男の奥さんらしい女性が現れて・・・。

 

 

ツイッターのTLでもちょくちょく見かけるようになったWeb漫画

クラゲ番地というWebサイトで配信されています。人気が上がったのを受け、単行本も現在2巻まで刊行。

「累計35万部突破!」と銘打って大々的に宣伝しています。

今回はこの漫画の感想などを書いていきたいと思います。

 

 

絵柄

 

まずは絵柄ですが、とにかくリアル。まあ、こういうバイオレンス系漫画はその方が迫力あるし、この絵柄だからこそギャグにしたときに味が出るわけです。

しかし最初の洗面所のシーン・・。アシスタント側から言わせると、指示を受けた瞬間に

「これだけで1日つぶれたな」と思うこと請け合いの、描き込み満載のシーンです。もちろんこの冒頭シーンが盛大な「ネタフリ」になっているわけで、作者の力の入れ具合が分かります。

キャラの絵柄ももちろん写実的ではありますが、変にマッチョにならず、あくまでスタイリッシュに。タッチで表現するタイプの絵ですね。服のシワの描き方などは「バガボンド」でもよく見られるやり方。

こういう「リアル系」の絵というのは 考えもなく描き込むとゴチャゴチャして見にくくなるだけなので、そうならないようにするには実はセンスが必要なのです。

その意味では「大ゴマ」と「小さいコマ」のメリハリをつけ、構図などもこだわって、描き込んではありますが「見やすい絵」となっていますね。

 

そして背景はこれ、おそらく作者自身(かどうかは知らないが)が、実際に撮影したものをトレースしているようですね。実はマンガの背景って、頭で考えたり写真を見ながら描く場合は、大体全部頭の中のカメラは水平で描いたりするの(つまり真正面の絵だと上下左右がきっちり90°)ですが、現実の街景はそうきっちりまっすぐにはなっていません。

これはカメラのレンズ、撮影する位置にもよるのですがほとんどの縦横線が「角度が曲がって」いるのです。

そういう「リアルな写真のパース」でこの背景は描かれています。

昔はこの手の「角度がつきまくったコマ」は読者の目線が安定しないのでよくないとされていたんですが、最近では読者の目も慣れてきたのか多用してもそんなに苦にならないようですね。もちろんそこにもしっかりとした画力があってのことですが、ここのアシスタントさんは何人いるのか知りませんが相当の実力者です。

大ゴマは細部まで描き込んでありますが、小さなコマは抜き気味で、それでもしっかり「絵」として成り立たせているので、安心感があり見やすい絵になっています。

 

タッチで描き込んである分、トーンは割とアッサリ目に押さえてあり、そこも「見やすさ」の一因になってるようですね。

 

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ストーリー

 

そして肝心のストーリーですが、こちらもやはりテンポがいい。ギャグマンガなので間やテンポは命ですが、15ページという短いページ数の中で小気味よく話が進みます。

非常に「センスのいい」作家さんだと思いますね←何様(笑)。

話の進め方としては、『その世界』で名を馳せた主人公が、今はその世界とは縁を切り、今までの世界からは最もかけ離れた「専業主夫」として家事全般を一手に引き受けている。という内容。

元来の完璧主義の性格からか、似合わないと思われる炊事、洗濯も完ぺきにこなします。しかし時たま出てくる「専門用語」と、実際にやってることのギャップにそこはかとない「おかしさ」がにじみ出ます。

主人公はいわゆる「ギャップ萌えキャラ」なのですが、私個人的には「今はその世界とは縁を切ってるキャラ」よりも「今でも何万人という構成員を持つ組織のトップが、実は専業主夫で‥」という方が、ギャップは大きくてインパクトもあったように思いますね。

実社会での普通の人の営みをあまり知らず生きてきた主人公のようなので、そこをもう少しデフォルメできてればと思ったり・・。これは完全に僕の好みですが。

まああまり主人公の過去やどういう風に生きてきたかを掘り下げる気はなく、もう「勢い」重視で描き続けるようなので、今はそれでもいいのかなという気がします。実際それで人気があるんですから、余計な「裏話」的なことは読者は望んでないのでしょう。

 

「普通の人が日常生活で体験する事柄を、「そういう人」が体験するとこんなにも面白い」

という、「ズレ」を楽しむマンガです。

人気になるのもわかる気がしますね。

 

 

以前からこういう「ギャップマンガ」はウケる傾向にあります。特にこういう商売の方たちは生活自体が特殊で、我々とかけ離れてる分ハマればヒットします。

 

「静かなるドン」

「てやんでいBABY」

「ごくせん」なんかもそうですね。

 

どこまで続くのかわかりませんがしばらくは追いかけて見続けてみたい、マンガの一つです。

 

 

連載は「くらげバンチ」というWeb 媒体。

元々は「週刊コミックバンチ」というのがあり、そこが色々名前や提携パートナーを変えたりしてさまざまに「バンチシリーズ」を手掛けています。

 

個人的な話で言えば、まだ編集部が吉祥寺にあったころ、私も持ちこみに言った記憶あります(笑)。ふつーのオフィスを借り切った小さな編集部でした。

そもそも設立したのが『週刊少年ジャンプ』の元編集長堀江信彦氏、漫画家の原哲夫氏、北条司氏ら。大手ではできない奇抜なアイディアで雑誌を作っていて当時でも雑誌会では結構な「異端児」的存在でした。

総額1億円の賞金での新人賞や、入選作品の読者アンケートで人気の高い作品は即連載など、新人作家にもかなり門戸を開いてる印象が当時はありましたね。今の内情はわかりませんが、それでもいろいろ手を広げていてたくさんの人気作を抱えています。

 

これからもこういう風にwebで人気になって単行本化という作品もどんどん出てくるでしょうね。チャンスが広がることはいいことです。

 

 

 

ちなみに最初「犬」だか「熊」だかわかんない動物の顔と書きましたが、あれはどうやら犬の様ですね。

主人公のしてるエプロンに柴犬の絵がプリントされてますし、何より作者の「おおのこうすけ」氏が、柴犬を飼っているようで、ツイッターでもアイコンにしてるほどの犬好きの様です。

バンチオンラインストアで、主人公がしているエプロンが買えるそうです。

 

 

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