漫画背景テクニック 街を歩いて観察しよう 初心者が見るべきポイントとは?

m12 漫画テクニック講座 アナログ編

 

街は素材の宝庫

 

背景作画は、ファンタジーやSFなど非現実世界を描くものでない限り、普段私たちが目にするものを描くのが普通です。にもかかわらず、それをいざ絵にしようとすると、意外に分かってなかったりします。おぼろげにはわかってるけど・・ちゃんとした構造、把握できている人はほとんどいないでしょう。

 

 

スポンサーリンク


 

 

例えばガードレール。構造すべて把握してますか?信号機電柱。毎日のように見てるはずのものさえ、実はあまり気をつけて見ていないせいで絵に描くとなるとあれ?ここはどうなってたっけ・・となり、完成してもイマイチそれっぽく見えなかったりします。この「それっぽく見える」が大事なんですが、これが意外に難しい。

言葉がちょっと適当っぽく聞こえるので簡単そうに思うかもしれませんが、きちんと物の構造を知ってないと「それっぽく」見えないのです。なので、みなさんもなにか別の用事で外に出かけたりするときは、よほど急いでる場合でない限り街にあるものをよく観察してみましょう。

写真に撮ってもいいし、しげしげと眺めて構造を把握することです。周りからジロジロ見られるかもしれませんが気にしちゃダメです(笑)。 ま、入っちゃいけないところや見てはいけないもの(法律的に)はダメですよ。 それをやって問題になっても責任持ちませんのであしからず。

 

以前は写真を自ら撮影 今はネットで画像検索

 

以前、漫画の背景作画といえば自分で撮影してきた写真や市販されてる「背景カタログ」を横に置いて見ながら描いたり、あるいはトレースと言って下から光を当てるトレース台の上でなぞり描きをするというのが主流でした。

プロの現場では作家さんが忙しい時や現場で急に欲しい写真ができた時などは、アシスタントが外へ出て撮影に行かされたものです。

私も何度か行った覚えがあります。風景写真ではないので写真の出来はどうでもいいです(もちろん形がちゃんと見えてればの話で、逆光とかは論外ですが)。

さまざまな角度からいろんな写真を撮ります。あまり写真に撮るようなものでないものまで撮っていたので周りからはさぞおかしな目で見られていたかもしれません。私は経験ありませんが不用意に誰か人を撮ってしまって怒られるなんてことも。

今はネットですぐ検索もできて便利なように思えますが、実は「これ!」と思える写真はなかなか自分で撮らないと見つからないものです。結局は自分で写真撮りに行ったなんて経験何度もあります。

 

そして普段目にしていてもしっかり見えている人とそうでない人の違いは、作画にもはっきり現れます。

スポンサーリンク




 

実物の「角」は「丸い」

post2

例えばこの二つの絵。同じものを描いていても右と左で全く見え方が違うと思います。よく初心者さんの絵にありがちなのが「角」をただの「角」として描いてしまうことです(左図)。しかし実際に世の中に存在している「物」というのは、大体が「立体」です。

そしてその立体が折れている場所つまり「角」はよく見てみると角ではなく少し「丸み」を帯びていることに気づくはずです(右図)。これを表現できるかどうかが「プロ」と「アマ」の違いです。あとは線の強弱ですね。初心者は特にこれが表現できずただの記号のような「線の集合体」の絵になってしまうのです。

miti

こちらもそう。「まっすぐな道」といっても、実際本当に定規で引いたようなまっすぐな道(左図)なんてないのです。だいたい緩やかにカーブしてたり、ところどころ凹んでたり(右図)。いびつなものです。

こういう街の「ランダム感」を表現できる人が「生きた背景」を描ける人になるというわけです。

 

「俺は漫画家になってキャラを描くんだから背景なんて描けなくてもいい」

 

と思う人もいるかもしれません。が、マンガ家への登竜門はまず「自分の作品を描いて新人賞に応募し、編集さんに見てもらう」が基本です。その場合、編集さんがチェックするのは「キャラ」や「スト-リー」もちろんですが「背景」も重要なチェックポイントです。

新人の投稿作品からアシスタントを雇う人はいないでしょう。それはもうその人の作品ではなくなります。

別に「驚くほど上手な背景」を描く必要はありません。この場合編集さんが見るのは「仕事の丁寧さ」です。

キャラはしっかり描いてるのに背景が雑だったりすると、「好き嫌い」だけで絵を描いてる人とみなされます。

漫画家は「仕事」なので、好き嫌いだけではできません。面倒な部分でも嫌がらず「しっかり丁寧に」描いてる作品はそれだけで好感が持てるし、プロとしてやっていくなら必要なスキルです。

そういった「仕事に対する姿勢」が、作品から驚くほどはっきりと見ることができます。

そして「作品自体の効果」にも背景の存在は重要です。背景の存在意義は、ただ単に時間と場所の説明だけでなく、集中線やベタフラと同じように作品の演出効果としても使えたりします。シリアスな場面に緻密な背景は心理的にも「緊張感」を与え、雰囲気を盛り上げてくれます。

さらにはもちろん「ペン慣れ」のためにも必要です。

背景なんてと思わず、だまされたと思って勉強してみてください。必ずあなたの作品に生きてきます。

そして、それが描けるようになるにはとにかく外へ出て、身の回りにあるものをよく観察すること。ネットの画像や写真からだけでは知りえない情報が、街には溢れています。

 

まさに街は「素材の宝庫」というわけです。

 

 

スポンサーリンク


 

コメント