アニメ業界はなぜこんなにもブラックなのか?マンガ業界との違いは?対策はあるのか?

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こんにちは、ようやく仕事が一段落したら昼から爆睡してしまって明日からの時間調節が恐ろしいOYUKIHANです。

 

アニメ業界で働く人、特に現場のアニメーターさんたちの待遇の悪さが話題になって久しいですね。

一番初めにアニメ業界の過酷さが世間に認知されたのはおそらく2010年、アニメ制作会社社員が「労災認定」されたあたりからでしょう。その方は労働時間が月600時間に及んだ(一か月は720時間、つまり一日20時間労働をしていた)という事で、あまりのアニメ業界の過酷さに衝撃が走りました。

その後2015年のNHK 「クローズアップ現代」で「2兆円↑アニメ産業 加速する”ブラック労働”」という番組が放送されました。

新人アニメーターの平均年収が約110万円という数字は本当に驚きでした。

 

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今日は、日本が海外に誇れるコンテンツの一つであるアニメの制作環境がなぜこんなにも劣悪なのか、どうやったら改善するのか、その対策について語りたいと思います。

 

なぜアニメーターの収入はこんなにも低いのか?

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その理由は一口には言えません。様々な理由が複合的に絡まっているからです。

一つ一つ原因を探っていきましょう。

 

雇用形態の問題

 

アニメ制作会社は「会社形式」は取っていますが一番下で現場作業をするアニメーターは「フリーランス」が多いのです。また「社員」として働いていても給料が「出来高制」で、しかも原価が非常に安い。

 

アニメーターとして働くには、制作会社に入りまず「動画担当スタッフ」からスタートします。文字通り「原画」を動かすスタッフの事です。アニメは少しずつ動きの違う絵をコマ送り(パラパラ漫画の要領)にして見せるものなので、その「動いているキャラクター」を描くわけです。

ところがその原価が一枚何と200円!めちゃめちゃ手が早くて上手い人でも一日に20枚も上げればいい方なので、日給4千円です。上手い人で4千円ですよ。下手な人はそれ以下。

 

アニメーション制作会社役職別平均年収

監督 600~800万

作画監督 350万

作画250万

動画110万

 

だから必死で頑張って枚数稼がないと収入にならない。もうほとんど「丁稚奉公」のような雇用形態です。下っ端として数年働いて出世をしなければ生活さえままならない。しかし出世したとしても作画担当、あるいはその上の作画監督クラスでも世のサラリーマンの平均年収よりは少ない。

その上の「監督」クラスになってやっと普通(かちょっと多い)くらいです。

しかしもちろん全員がなれるわけではありません。多くの人は「作画」クラスでとどまり、毎日やりくりしながら生活している印象です。

 

ですから、例えば小さい制作会社にアニメーターとして就職する際、面接で

「貯金はありますか」

とか

「親御さんに仕送りなど援助してもらうことが出来ますか」などと聞かれることもあるそうです。

 

そしてさらに言えばアニメーターは「フリーランス」である以上、労働者ではなく「個人事業主」の扱いになります。

したがって会社から給料が支払われていても法的には「労働者」とはみなされず「労働基準法の適用外」です。だからいくらでも「長時間労働」させても違反ではないのです。

 

制作委員会との契約、制作費の問題

 

日本のアニメは通常TV局やスポンサー企業、出版社などの制作委員会が制作費を決定しそこから配分されたものが制作会社に回ってくるのですが、その金額が何とも恐ろしく低い。

日本動画協会の調査によると、業界全体でのいわゆる「アニメ市場」は 一~二兆円規模と言われています。その中から制作会社が受け取る報酬はその約10分の一の1000から2000億程度。

しかも、アニメがヒットした場合でも、そこから生まれるグッズなどの売り上げは全て制作委員会の利益になるという契約になっていて、制作会社が恩恵を受けることがないのです。

 

まさしく数年前問題になった「派遣切り問題」と似ています。

派遣会社がたっぷりマージンを取り、その下の現場作業員にはほとんど還元されない。しかしアニメーターの場合はそれでも専門職ですよ。昨日今日の派遣さんにできる仕事ではない。

にもかかわらずそんな状況。まさしくアニメーターの「使い捨て」のような問題が起こっています。

これでは優秀なアニメーターはみな外国へ行ってしまいますよ。

 

 

 

周囲の無理解 供給過多による人材インフレ

 

これも、アニメ業界の過酷さが伝わらずアニメーターの職場待遇が改善しない原因の一つです。

 

どんなに現場の過酷さを訴えても

 

「そうは言っても好きなことをして食べていけてるんならまだいいじゃん。」

「やりたい仕事につけてる人なんてほんの一握り。それが実現してんだろ。甘えるな」

 

と言われます。

それが「外部の人間」ならまだしも、同じ制作会社の上司に言われたりします。

そして挙句は先日の記事でも書いたパワハラ上司の典型的なセリフ

 

「オレのときはもっと辛かった。このくらいで音を上げるなんてだらしない」と来ます。

 

その上司だって昔は同じ辛い目に遭ってたはず。

そういう場合「俺が出世したらこんなこと下の奴にはさせない」なんて思う人は少なく、

大体は「俺があんなに苦労したのに若いこいつらが楽することは許さん」という心理になり、さらに過酷な環境へと繋がる「負の連鎖」が起こるのです。

そして最終的には「嫌なら辞めろ。お前の代わりはいくらでもいる。」で終わりです。

 

たしかに、今やアニメは「人気職業」の一つです。たくさんの若い人がアニメーターになるために専門学校に通う時代。事実「代わりはいくらでもいる」状態。

したがって一人一人のアニメーターの価値が下がり、人材インフレが起きているのです。

 

 

日本人特有の職人気質 まじめさ

 

 

日本人は、一心不乱に物事に取り組み技術を磨く「職人」が大好きです。

もちろん外国にだっていますが、それでも自分の収入や権利、福利厚生にはシビアです。海外のクリエイター業界には労働組合もあり、気に入らないことがあるとストライキをしたりもします。

しかしなぜか日本には、そうやって自分の権利をことさらに主張する行為を良しとしない空気があります。昔から職人気質というか「文句ひとつ言わず黙々と仕事をする」ことこそが美徳と考えている節がありますね。

そして本人たちの中にも「それでも好きなことができているんだから」と妙に納得してしまっている部分もあります。

 

 

こんな風に様々な理由が複合的に絡み合って、なぜかこの劣悪な職場環境が改善しない理由となっています。

ちなみにマンガ業界も似たようなものではありますがそれでもアニメ業界よりはマシと言えるかもしれません。アシスタントだけでも食べていくことはできますし、たとえ年収が低くても自分の作品が認められればすぐにでも自立することができます。(もちろん売れなければ意味ないですが(笑))。

アニメの世界は、自分の力が認められるには時間がかかります。動画担当から作画担当に出世するだけでも数年かかると言われているのでその厳しさはマンガの比ではありません。

 

 

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対策はあるのか?

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ではどうすればこのアニメーターの過酷な環境が改善されるのでしょう。

これだけ問題になっている以上、国も放っておくわけにもいきません。いろいろな策を講じて何とかこの状況を変えようとしています。

若手アニメーター育成プロジェクト

文化庁から委託された団体が行うアニメーターの教育・指導を兼ねた作品制作応援プロジェクト。

制作会社に一定の予算を与え、現役の監督、演出家などの指導のもと作品を制作してもらい有能なアニメーターを育成しようというもの。中には劇場映画になったりTVアニメになったり海外の映画祭で受賞したりする作品も生まれています。

 

『リトルウィッチアカデミア』

TVアニメ『リトルウィッチアカデミア』クライマックスPV

『音楽少女』

音楽少女 #01「100億人に一人のアイドル」

 

小さな制作会社や若いアニメーターに「世に出るチャンス」を与えようというものです。

 

 

NPO法人アニメーター支援機構の創設

 

2014年から、入社3年目までの新人アニメーターが月3万円以下で暮らすことが出来る寮を開設。

有名アニメーターによる技術支援など経済面、技術面からバックアップすることを目的に作られたNPO法人。

そこでは、寮の他に「アニメーターに利益が還元される新しいアニメ制作のシステム作り」としてクラウドファンディング等を利用することで、制作費の確保と、制作者サイドが直接お金を受け取れる仕組みを作ろうとしています。

 

 

しかしあまり根本的な解決にはなってないような気もします。

元々の「制作費」の低さや政制作委員会による「中抜き」などの問題が改善されなければ、業界全体の底上げにはつながりません。

現在の日本経済そのものにも関係があるようです。そもそもアニメ制作に回せるような潤沢な資金がスポンサー側にもないというのが現状です。

 

 

まとめ

 

以上、アニメ業界の現状について軽く説明させていただきました。

結局は以前から言っているように「フリーランス」として生きていくための勉強をしっかりしたうえで個人一人一人が対処していく必要がありそうです。

もちろん国や会社自体にも頑張ってほしい所ですが、今すぐどうこうできる話ではありません。

一人ひとりの意識改革が、ここでもやはり大切です。

 

制作会社にはきちんと給料を払い、福利厚生もしっかりしたところもあります。

そういったところを自分で探して選んだり、あるいは海外への進出も視野に入れて行動するのも手です。

アメリカのアニメーターなどは平均の年収が日本の倍ほどあるとも言われています。そして契約社会だけあって社会保障制度も充実しています。日本の「丁稚奉公制度」とははるかに違います。

 

もちろん海外へ行くなんてのはそう簡単にできる話ではありませんが、もはやフリーランスとして生き抜くためにはそのくらいの覚悟も必要、という気がします。

そのうえで業界には関係のない皆さんにはこういった現状も踏まえ、少しでも協力していただけることがあれば協力してやって欲しい、と思います。

最近では「京アニ」の事件など、見てる人に夢を与えるために一生懸命頑張ってるアニメーターの彼らが不遇な目に遭ってしまっています。

無理をしろと言ってるわけでなく、クラウドファンディングで協力できることや、小さい会社でもいいアニメを作っているところが見つかれば積極的に拡散してもらうなど、地味でも草の根の応援が必要だと思います。(円盤やグッズ購入はスポンサーが喜ぶだけですので。もちろん止めはしませんが)

 

海外にも誇れる、子供のころから夢や希望を与えてくれた日本のアニメはもはや「日本人全体」で守っていかなければならない「国家的財産」だと、僕は心の底からそう思うからです。

 

 

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