元週刊少年ジャンプ編集者から学ぶ 「キャラクターの関係性」について

記事 漫画の作り方

こんにちは OYUKIHANです。

今回もまた元ジャンプ編集さんによるブログについて詳しく掘り下げていきたいと思います。

 

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きょうはその中から3回目の記事 ドラゴンボールの敵はなぜ二人なのかについてです。

まずは元記事をご覧になってからこちらを読むとより理解が深まると思います。

 

元週刊少年ジャンプ編集者が漫画家から学んだことを書いていく

 

敵キャラが二人いる事の有効性と便利さ

 

 

この記事で著者の斎藤優さんは、ドラゴンボールに出てくる「敵キャラ」が、よく「二人」で出てくることに言及しています。

ナッパ、とベジータ、17号と18号などですね。

この理由について斎藤さんは「描けることが増えるから」と語っています。
どういうことかと言うと、要するに「説明がしやすい」ってことです。

キャラが二人いることによって自然な形で状況説明ができ、キャラの性格まで表現できる

 

敵が一人の場合だと、その名前や目的などの表現方法に限界があります。

敵キャラに限らず、読み切りでも連載漫画でもよくありがちなのが「キャラが一人で自己紹介する」というスタイルです。

 

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特に悪いとは言いませんが、なんだか説明的で不自然ですよね。

 

あるいは「ナレーション」という形で説明するパターンもあります。
特にファンタジー系漫画などで、異次元の世界を舞台にした場合、そこがどういう世界なのかを説明して読者に入ってきてもらわなければなりません。
皆さんもやたらナレーションばかり出て来るファンタジー漫画、よく見ると思います。

でもキャラの名前や性格までナレーションで説明して、そのうえ世界観までナレーションでは、それこそナレーションだらけで読みにくいことこの上ありません。
もちろんあえてそれを利用する場合もあります。「ちびまる子ちゃん」の場合は、ナレーションが「ツッコミ役」をこなすことで笑いにつなげています。

 

ちび

 

こういう「客観性」が必要なギャグマンガなどにはナレーションがいい味を出しますが、シリアスなストーリー漫画だとせっかく物語に入り込んだ読者をいったん話の外へ出す行為なので、リズム的にもあまりよくないと思います。

ストーリー漫画は出来るだけ読者をその世界の中に「入れっぱなし」にすることが重要です。
そこでこの「二人キャラ」が生きてくるわけです。

 

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このように二人の会話で説明ができれば、自然にキャラの名前や今の状況、そして性格まで表現できるわけです。
これが著者の言うところの「二人キャラを出すことの便宜性」と言えるわけです。

 

敵の強さの表現にも便利

 

そして、ブログでも書いてあるように「敵キャラ」を出す時には、その「強さ」を表現する時にこの「二人キャラ」が非常に便利に動いてくれるのです。

一人だけの場合、それをすべてその敵自身が表現しなくてはなりません。しかし本人が「俺はこんなにも強いぜ」と言ったところで何の説得力もありません。あるいは言葉でなくてもわざわざ主人公の目の前でモノを破壊したり、デモンストレーション的に「強さ」を見せる必要が出てきます。

しかしそんなことを自分で言ったりやったりする奴はただのザコ扱いで、すぐ主人公にやられるフラグのようになってしまいます。北斗の拳あたりに出てくるザコのようにね(笑)。

まあ今では逆に本当に強い奴の「ビッグマウス」的な表現方法もありますが、「自分からわざわざ言う、イケイケなタイプ」という形で「性格を限定」してしまうことになり、無口な敵キャラなどには適用できない演出方法になってしまいます。

 

そこでその敵がどれだけ強いかを語ってくれる「別の敵」が必要になるわけです。

 

敵の仲間が表現する敵の強さ

「あいつが本気で怒れば星一つ吹っ飛ばすのはわけないぜ」
「○○様の強大なお力でここら一体の星々は一瞬で制圧した。次は地球の番だ。」

 

すでに強いことがわかっている敵が表現する「別の敵の強さ」

あいつは・・俺なんか目じゃねえ・・俺が何人束になったって勝てやしねえよ‥

 

ドラゴンボールで言えば、すでに「強い」ことが読者にも理解できているベジータが、フリーザには最初おびえていましたね。「あのベジータが恐れるフリーザって一体・・」と、読者にベジータの強さを基準にフリーザの強さを想像させるわけです。

 

 

観客を配置することで「実況」役」に

 

更に周りにキャラを配置して、まるで主人公の戦いを観戦している観客のようにして、状況を実況・解説する役に付かせたりもできます。

これは「スポーツもの」などでもよく用いられる方法です。球技や格闘技など大きな試合になればそれだけ観客も増え、試合内容についてしゃべる機会も増えます。

試合状況や主人公の狙い・強さなどを代弁させるのです。これは敵味方に限りません。

 

あいつは・・・こんなことくらいでくたばるような奴じゃない・・
さっきの技・・決まったように見えるが奴には効いてないぜ‥奴は全ての技を見切っている。

 

例え勝負は1対1で行うバトルであっても、ただ当人同士が戦ってるだけでは迫力や演出方法にも限界があります。

そこで周りに複数のキャラを配置し、彼らに語らせることで「臨場感」「緊迫感」「心理描写」など様々な演出方法を駆使できるわけです。

 

ドラゴンボールが上手いのは、本来なら1対1で観客のいないようなバトル漫画を、「天下一武道会」という「観客のいる大会形式」にしたことですね。

これで本人以外でもたくさん喋るキャラができ、実に便利に話が進むのです。

 

以上のように本人以外のキャラを上手く活用することによって、本人自身があまりしゃべらなくてもそのキャラクターを表現できるというわけです。

ただ、元記事でも書いてるように「キャラが多ければいい」というものではありません。やはりそこには「必要最小限」な「関係性」というものも重要になってきます。

 

キャラ同士の「関係性」まで描けると「より立体的に」キャラを捉えることができる

 

元記事は実は次の第4回にもつながっていて、次の記事ではその「キャラ同士」の「関係性」に言及しています。

ただ単純に「そこにいる人たち」ではなく、それぞれがそれぞれに対してどういう感情を持っているか。

好き嫌いやその程度までを可視化してその要素を加えることで、そのキャラが出てきただけで主人公の立ち位置がわかり、キャラに感情移入しやすくなるわけです。
この関係性をもとにストーリーを作れば話が途中で取っ散らかったり見失うことなく一貫性が生まれるということです。

先ほどの「観客用」のキャラ配置においてもこの関係性は利用でき、必要な人数の限度もわかってきます(ただのエキストラは別)。

 

味方側の観客キャラ

戦ってる当人の純粋な味方 親友キャラ
仲は悪いが実力は認めあってるライバルキャラ
実はその戦いを止めさせたい、主人公に恋してるヒロイン

など。

 

敵側の観客キャラ

主人公も嫌いだが戦ってる奴も嫌いで隙あらば自分が一番になろうとする悪の幹部キャラ 
怖いから従ってるだけで実はいつ寝返ろうか考えてるザコキャラ 
失敗は許さないと見張ってるラスボス

などです。

元記事でもやっていましたが関係性を相関図などにするとわかりやすいです。

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このようにお互いの関係性を感情やどう思ってるかをまで細かく設定し、相関図にして頭に入れておけばセリフも出やすくなり、読者も感情移入しやすくなるので非常に便利です。

 

キャラはたくさん出せばいいってものじゃなくその関係性を考えて必要最小限にとどめるのがポイント。

 

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複数キャラの設定はストーリー作りにも幅ができる

 

そして、これは元記事には描かれてなかった事ですが僕個人の意見として、敵味方問わずキャラを複数出すことのメリットとして挙げられるもう一つのポイントがあります。

それは

「キャラにいくらでもピンチが与えられる」という事です。

 

一人同士の場合、どうしても戦い方の演出方法に限界があります。あまりダメージを与えすぎるとそこから逆転することがなかなか困難になります。無理やりな逆転ストーリーに持っていくのはあまりにも強引感が出て説得力やカタルシスに欠ける場合があるのです。

それが複数のキャラがいればそこで手助けすることができる。

時には主人公を休ませるために交代してもいいし、あるいはその時はそこにいなくても主人公がピンチで今にもやられそうな時、すい星のように現れる味方の登場はそれだけで読者のテンションも最高潮に達し物語を盛り上げてくれる展開となります。

 

しかもそれが「普段ケンカばかりしている者同士」であった場合、

それでも助けに来てくれるなくてはならないパートナー」感が演出でき、少年漫画などには欠かせない「胸アツ」な演出となるのです。

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わかりやすいのは「うしおととら」ですかね。

とらは潮といつもケンカしています。しかし二人で一緒に過ごすうちおかしな友情が芽生え、いつしか潮がピンチになると助けてくれる「頼りになるヤツ」になっていきます。

しかし素直じゃないとらは「お前を食うのはこの俺だ。他の奴に食われるのはムカつくから助けただけだ」と強がります。

この「ツンデレ感」もまたとらの魅力になっていくわけです。

 

 

メリットあればデメリットもある

 

今までは「複数キャラ」を出すことのメリットについて語ってきました。

 

複数キャラのメリット

 

①会話によって自然な状況説明ができる

②キャラ同士がよく知ってる者同士だとその関係性で性格まで表現できる

③関係性により読者が感情移入しやすくなりストーリーの選択肢が増える

 

しかしやはりどんなものにもデメリットはあります。最後にデメリットについて解説していきたいと思います。ただ敵キャラを複数出すことのメリットは非常に大きいので、デメリットを踏まえつつ、上手くストーリーをコントロールしていくことが大事です。

 

複数キャラのデメリット

 

①視点がバラバラになる

②セリフが多くなる

③作画に手間がかかる

 

まず①の「視点がバラバラになる」です。

この原因はやはりキャラ同士の「関係性」がしっかりとれていないことが挙げられます。それぞれのキャラの思いや、何を目的にそこにいるのかがはっきりしていないと感情移入もしにくくなります。

逆に脇キャラの思いが強すぎると主人公がかすんでしまったりして、読者がどこに視点を置いてみていいのかがわからなくなります。

ここはしっかり上記した「関係性」や「相関図」について理解し、作者自身の視点がブレないこと。その時その時で読者に「誰に感情移入してもらいたいのか」を明確にとらえストーリーを作っていく必要があります。

 

次に②の「セリフが多くなる」ですが、これはもうたくさんキャラが出てくるわけですので当然ですね。できるだけ簡潔に、テンポに注意してネームを書くことが大事。

さっきはこいつがしゃべったから今度はこいつに・・など、喋らせるキャラのバランスを考えるのも重要です。

最後に③の「作画に手間がかかる」は言わなくてもわかりますね(笑)。そりゃたくさんキャラを描かないといけないので時間も手間もかかります。

ましてやアップだけではなく上から下から、カメラアングルやコマ割りもいろいろ考えてネームを書かないといけません。しかし考えようによってはそれだけ空間を埋めやすいという部分もあります。

逆に二人だけの方がバリエーションが少ないため大変かもしれません。空間恐怖症の人なんかにはキャラがたくさんいた方が描きやすいと感じるかもしれませんね。

 

 

まとめ

 

以上、元週刊少年ジャンプ編集さんのブログから「敵キャラ」が複数いることの意義と便利性について解説しました。

読み切りなどページに制限あるものにはなかなか難しいかもしれませんが、会話によって説明していく「複数キャラ」活用は作者にとっても便利だし読者にとっても読みやすい

まさにwinwinな方法だと思うのでぜひ使っていただきたいと思います。

ただ、上で書いたように「出せばいいってもんではない」のも事実なので、関係性や必要に応じた最小限のキャラの数を意識しながら無理のない「キャラ配置」を心がけましょう。

 

皆さんの楽しいマンガ制作の参考になれば幸いです。

ではまた。
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