「模写」は必要か? 正しいやり方、コツ&漫画を描く上での「模写」の意義とは

mos17 漫画テクニック講座 アナログ編

 

通常、皆さんも「絵」や「漫画」を描くとき一番初めにやることは「模写」だと思います。つまり見本になるものを横において、それを見ながら描くというもの。 トレースとは違います。

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面白いマンガ、好きなマンガを読んで、少し「絵心」のある人たちはそのマンガの一シーンや、キャラクターを真似して描いてみる。少しうまく描けたら自分で見ながらニヤニヤ・・(笑)そういう幼少時代を、誰もが過ごしたと思います。

ただそれが「趣味」の段階で止まっているならいいですが、自分のオリジナル漫画を描きたい、プロの漫画家になりたいと思ったら、今度は模写でなく自分でそれらを生み出さなければなりません。

もちろんすぐに完ぺきなモノを描けるわけではありませんから、今度は絵を描く「練習」として模写をやり始めると思います。

しかしこと漫画を描くという行為に関して、「模写」というものがどれほど役に立つのか・・そのことを考えてみたくて、今回記事を書くことにしました。

 

漫画を描くうえで、「模写」は意味あるのか?

 

油絵や鉛筆クロッキーなどで人物や静物を描くときは目の前にその見本を置いて、それを見ながら「模写」しますが、マンガを描くための練習として見本を置いて「模写」することに、意味はあるのでしょうか。

 

結論から言うと、「なくはない」。ってとこですかね。微妙な言い方でスイマセン。

 

どんな大作家でも、絵を描き始めたころはその当時好きなマンガの真似ばかりしていたでしょう。マンガ創世記にさかのぼれば『漫画の神様』と言われた手塚治虫さんが全盛期の頃は、手塚さんに憧れたマンガ家の卵たち(藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫など)も、描くマンガは手塚さんソックリの物ばかりだったという話。

 

だから、好きなマンガの絵を描いて練習するのも悪いことではない。しかし、プロの漫画家になろうと思ったら、自分のオリジナル作品を描かなければ飯は食えない。

こればかりは、「模写」でどうにかなるものではありません。しかも漫画で描くわけですから「自分のタッチ」を身につけるしかないのです。

まあ、顔の造形は人それぞれ好みでいいとは思いますが、ここで問題になるのが、タッチ以前に「人体の構造」を把握できてるかどうか。です。

と言ってももちろん医者になるわけじゃないので各部の名前や内部構造まで理解する必要はないですが、顔の造形、目や鼻の位置、大きさ、それに対する体の大きさ、長さなど、いわゆる人間が人間らしく見えるかどうか。これを考えて描かなければいけません。

昔からの伝統的な遊びで「福笑い」と言うのがあります。

顔の輪郭だけ描いてある絵に目や鼻などそれぞれのパーツを、目隠ししたまま置いていくというもの。目が見えないので、とんでもないところに置いてしまって笑いになる‥というヤツです。

福笑い

ここまでひどくはないけれど、構造や位置関係が理解できてない人は、たとえ目隠ししてなくても、やたら歪んでたり大きさがおかしかったりする絵を描いてしまうのです。

 

↓左の絵を模写しようとしても‥右の絵のようになってしまう。

 

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人間の「モノの構造や位置関係を瞬時に理解できる能力を「空間認識能力」と言います。

どこに何があるか、対象物の距離はどれくらいかなど、見ただけで直感でその構造を認識する能力。この能力に長けている人が「人体をそれっぽく見せる」ことができるわけです。

もちろんこれは訓練で鍛えられます。そのために「模写」が必要なのです。

 

ただ、そうは言っても単純に「見て描く」だけではダメです。それに、見本が横にあるからと言ってそのままキチンと最初から描ける人はいません。空間認識能力が鍛えられていないからです。

ではどうすれば、空間認識能力が鍛えられるか。

それはまず、人間の「骨格」を最初に確認するのです。見本を見たらその骨格の構造をアタリで描いてみて、2次元でなく三次元、まさに「空間」として意識するのです。

 

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ほとんどの初心者が、見本があるからとアタリを描かず一発描きする場合が多いです。ちゃんと空間を意識することに慣れていれば別ですが、できてない人が一発で描こうとすると上記のような絵になってしまいます。

 

描くのはあくまで「人間」。見本は自分の体を活用。

今もマンガの専門学校で模写はやってるんでしょうか。学校の美術の時間でもやっていたような人物画のデッサンが専門学校でもあると聞きました。

特に否定はしません。空間認識能力を鍛えるためと考えればやって損はないと思います。

しかし我々はあくまで「漫画」を描くわけですから、よほど「マッチョ」が出てくるマンガでない限り西洋の、マッチョな裸の人物の彫刻をデッサンしても、マンガそのものに役は立たないと思います。

 

では、人物を描く練習するにはどうしたらいいか。私のお勧めの方法をご紹介します。

 

それは「自分で撮った自分の写真」を使う。

今はだれでも手軽にスマホで写真が撮れますから、自分の姿(できれば全身)を何枚も何枚もポーズを変えて撮り、それを見本に描くのです。しかも、自分が見るだけに限定すれば、できるだけ服は少なめで体のラインがしっかり見えるような写真の方が望ましいです。

それを見本に練習するのです。

その時も大事なのが一発描きをせず「骨格のアタリ」を取ることです。どういう構造でそうなってるのか頭と体に覚え込ませるのです。特に「関節」の存在を意識しながら描くことが重要です。

 

そしてもう一つ、漫画のキャラクターを描くときの基本として大事なのは

 

服を着せる前にキャラクターの体を描き、その上に服を着せていく。

 

という考え方をすることです。

 

キャラを描くとき、普通は服を着せた状態で描くと思いますが、慣れてない人は骨格がうまく描けていないため、服を着せてもなにが歪んだような絵になってしまいます。

それを矯正するためにはまず人間の体を先にアタリで描いて、その上に「キャラに服を着せていく」というイメージが大事です。

ですのでまずその人物の体のラインを、見本を見なくても描けるようになるまで練習することが大事なのです。

 

↓いちばん左の絵を模写します。初めは『骨格』を意識しながらアタリを描きます。

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mos10通常、成人男性は平均7等身なので、それを基本に描きます。この絵は足を折り曲げているので6頭身くらいになってます。

 

mos14
mos11mos16完成。

 

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自分の写真と言いましたが、もちろん異性や、年齢で体のラインは全く違います。

異性の場合はよほど親しい間柄でなければ体のラインが見える写真など難しいでしょうから、そこは市販の写真集、ポーズカタログがあるのでそれを買った方がいいと思います。

 

 

服を着てないカタログもあるのですが・・グーグル先生が怖いので(笑)

普通のだけご紹介します。

 

あとはご自身で探してください。

 

模写ばかりやっててもキャラ絵は上達しない

 

模写は大事と言いながら矛盾するようなことを言うようですが、やはりあくまで「模写」は「模写」に過ぎません。

我々はそのキャラを「なにも見なくても」描けるようにならなければ意味ありません。「模写」をいつまでも練習してても「模写」が上手くなるだけで、いざなにも見ず描こうとしても描けないのです。

ですので、ある程度模写でうまく描けるようになったら模写をやめて、そらで描けるような練習も一緒にする必要があります。

 

結果、練習方法としては次のような順番がいいのではと思います。

 

「模写」を自分のキャラ絵に有効活用するためにすることとその順序

 

①人物の資料写真をとにかく集める。(体のラインがわかるもの)

②見本の人物の骨格をアタリで描く。

③骨格に沿って体を模写する。

④ある程度描けるようになったら模写をやめ、見本を見ないで描いてみる。

⑤その体に服を着せて描く。

 

とにかく見本を見なくても頭の中にイメージができてしまうほど、何度も何度も練習するのです。

 

 

完成図を頭の中に「ダウンロード」することが大事

 

模写をするという行為は、例えて言うならネットの世界で言う「ネットサーフィン」で「画像を検索」するのと同じだと言えます。当然ですが検索するだけでは自分のパソコンにその画像は入ってませんから、同じ画像を見ようと思えばまたその画像があるサイトへ行かなければいけませんよね。

それをなにも見ないで描けるようにするには、検索で拾った画像を自分の頭の中に「ダウンロード」(記憶)して、フォルダ化しておくことが必要になるのです。

そのフォルダの中からイメージに合った人物絵を「アウトプット」して描く。これが漫画家の仕事なのです。

 

模写の時必要なのは「空間認識能力」だけでしたが、今度はそこに「記憶」という機能を追加し、自分の中に取り込んでアウトプットする。もう脳内フル回転です。

 

しかし繰り返し練習することで体は覚えてくれます。

 

人間の記憶の種類には「短期記憶」と「長期記憶」があって、模写で覚えた程度の記憶は「短期記憶」にすぎません。だからすぐ忘れてしまうのです。

それを自分の頭の中でフォルダ化し、いつでも出せるような「長期記憶」にするために①から⑤までの訓練を繰り返す必要があるのです。

 

服を描く練習も同じです。最初は模写から入り、ある程度描けるようになったら見ないで描く練習をする。

これだけでずいぶん上達が違うと思いますよ。

 

ただこれはあくまで「私のやり方」なので、もっと違った方法があるならそれでもいいです。

頑張って「自分の絵」を理想に近くなるまで向上させていきましょう。

 

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