こんにちは OYUKIHANです。
今まではマンガを描く上での「技術的な側面」からのテクニック講座を書いてきましたが
今回はそれと同じくらい重要な「ストーリーの作り方」について語っていきたいと思います。
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この人そんなことエラソーに語れるほど売れてたっけ…?
しっ!
そこは言わないであげるのが優しさってもんよ。
・・・・・💦。
その通り。僕は今まで商業誌で連載などしたことはなく、読み切り作品が何度か載った程度の人間です。(あとは企業の宣伝漫画が数本)そんな奴に何が語れるのかと言われそうですが、そこに行きつくまでにも長い道のりがあります。
投稿作品に賞をいただいて担当の編集者がつき、その人とのマンツーマン(時には数人)の打ち合わせがあります。
そこで何度もボツや直しを食らい、心が折れそうになりながらも歯を食いしばって挑戦し続けた者だけが「掲載」というご褒美をもらえるのです。
ここでは僕がその打ち合わせの中で培ったテクニック、どうすれば面白いマンガが作れるのか、編集さんから学んだことや「これはやってはいけない」ことなど、経験を踏まえながら解説していきたいと思います。まあある意味で「しくじり先生」的な感じで読んでもらえれば。
ちょっと長くなりそうなのでシリーズ化してお送りします。
今回はその「ストーリーの作り方」の中でも基本となる「アイディアの出し方」についてです。
建築士になれ?漫画づくりは家づくり!
またおかしなタイトルにしてしまいました(笑)。
でもあながち間違ってはいないと思います。漫画のストーリーを作るのは「家づくり」に似ています。
家を建てる時、人はまずどんな外観の家にしたいのか大まかな理想の形を思い描くことから始めると思います。それから壁の色は何か、玄関はどこに置くか、キッチンやリビングの間取りや配置はどうするのかなど細かく設定していきます。
さらに、そこに人が住むことでその「家自体」の雰囲気も違ってきます。まさに「キャラクター」によって作品の雰囲気が変わるのと同じことです。
皆さんもストーリーを考える時は、自分が一流の建築士にでもなったつもりで「理想の家」を思い描き、そこに一つ一つテクニックを駆使することで具現化していってください。
まずは家の外観 「ジャンル」&「テーマ」を考える
「家」を建築する時、どんな形の家にするか まずは外観を決めます。和風にするのか洋風にするのか、何階建てにするのかなど。(まあ僕は建てたことないけどね(笑)。)
話作りで言えばそれは「ジャンル」です。どんな「ジャンル」で漫画を描くのか。学園ものなのかスポーツものなのか、あるいはファンタジーか。
ここはもう思い切り「自分の好み」でいいでしょう。「描きたいジャンル」を他人の好みにする必要はない。目いっぱい理想の外観を作ればいいと思います。
描きたいジャンルが決まれば次に考えるのはその作品の「テーマ」です。
わかるようでわからない「作品のテーマ」とは?
テーマ=主題。 言葉ではわかっていてもイマイチ何のことだかピンとこない人もいます。
テーマとは何なのか。
わかりやすく言うと「あなたがその作品で伝えたいこと」です。
当然ながら漫画は「描き手」と「読み手」があって初めて成立します。ただ単に趣味で描く分には自分が気持ちよくなるように描けばいいですが、プロあるいはコミケ用の作品など、不特定多数の読者に読んでもらわなければならないものはその読者(他人)に向けて描かなければならないのです。
その時に「何が言いたいのかわからん」と読者に思われるような作品では意味がありません。
もうお判りでしょう。プロの漫画家とは「他人のために漫画を描く人」のことなのです。
もちろん自分が描きたいモノを描くのは基本です。しかしそれが他人に伝わらなければただの自己満足に過ぎません。作者はそれを様々なテクニックを使って「他人に共感」させるために漫画を描くのです。
自分に為だけに漫画を描く奴はプロではない
これが僕が編集さんにまず最初に言われたことです。
小難しいことはいいから具体的に説明してくれよ。
はいはい。
要するに「テーマ」などと書くから難しくなるんです。単純に言えば「俺は(私は)~を伝えたい!」ってことです。この~に入る言葉を考えればいいんです。
例えばあなたが最初に「描きたいジャンル」をスポーツモノ、高校野球の漫画を描くと決めたとしましょう。
その高校野球の漫画を描くことで、あなたが読者に伝えたいことは何なのか。
その時、「野球というスポーツの面白さ」や「野球を通じて感動的な話」というものではあまりに広すぎます。長期連載するならまだしも、読み切り作品など短いマンガを描くときは出来るだけテーマも具体的な方がいいです。
- チームメイトとの友情を通してチームワークの大切さを伝えたい
- がんばって練習して技術が上がり、試合に勝利することの喜び、達成感を伝えたい
- 野球を通しての恋愛モノを描き、好きな人の応援がどれほど力になるかを伝えたい
など、語尾に「伝えたい」をつけるとより明確になって自分にもわかりやすくなります。
そしてこうやって「伝えたい」ことを決めると、おのずとその伝えたい「相手」も明確になってきます。
友情を通じたチームワークの大切さを、お年寄りや主婦相手に語ってもあまり意味はない。やはり同世代のスポーツが好きな人たちに向けた作品という事になります。
そうなってくるとその「ターゲット」となる同世代の人たちの悩みや「こうありたい」と思ってることなどを想像し、ストーリーに組み込むことで共感を得やすくなる、という事です。
ストーリーもキャラクターも キーワードは「意外性」
骨組みが決まれば後は少しづつ「肉付け」していきます。
物語の舞台やキャラクターの設定です。
どこで話が展開していくのか。先ほどの高校野球漫画ならどういう学校なのか。どんな生徒たちがいるのか。
これを考える時に重要になってくるキーワードがあります。それは「意外性」です。
現実の話ならともかく漫画にして読んでもらうためには何かしら読者に「おっ」と思わせるインパクトがなければいけません。普通の高校生が普通に野球をする漫画なんて誰も興味ないからです。
- 今まで一度も試合に勝ったことがない学校
- ヤンキーばかりで部活を作ってもすぐ不祥事で出場できなくなってしまう高校
- 去年まで女子高だったため男子生徒が8人しかいない学校
など、とても普通に野球ができそうにない設定にする方がインパクトがあります。
もちろんキャラクターにも意外性は必要です。
- 一度も野球をしたことがない主人公
- 野球の才能はあるが致命的な欠点がある主人公
- とにかく人と仲良くするのが嫌いな主人公
などです。
とにかくテーマという名の「ゴール」を決めたら、出来るだけそこから遠いところからスタートさせる。これが物語づくりの「基本」と言えるでしょう。
この「意外性」は、主人公の性格的な部分でも適用できます。
主人公が一人の場合
「野球の才能はあるが致命的な欠点がある主人公」で言えば、たとえば
「天才バッターだけど試合になると極度に緊張してしまい実力の半分も出せない」とか、
「剛速球ピッチャーだけど自分中心主義でチームワークを一切考えないワガママなヤツ」など
「○○だけど、○○。」という「ギャップ」や「二面性」を持つ主人公だとインパクトを与えやすいというものがあります。
「ツンデレ」という言葉がありますがあれも普段はツンツンしてるのにたまに見せる「デレた部分」がギャップとなって魅力になるわけです。
意外性のあるキャラの例
- 極主夫道
- のだめカンタービレ など
主人公が複数の場合
主人公は一人だけとは限らず、複数のキャラクターが主人公でストーリーが進んでいくものがあります。これを「バディもの」と呼んだりします。
こういった作品にも先ほどから書いている「意外性」が大事になってきます。この場合の意外性は「真逆」と言い換えてもいいです。つまりできるだけ正反対な性格のキャラクターを登場させた方が面白いわけです。
極端に頭がいい人と、極端に悪い人。強気な人と弱気な人など、真逆な性格や性質を持った二人が絡むことによって起こる化学変化におもしろさが出るわけです。
真逆だからこそ生まれる軋轢をいかに克服していくか。これがストーリーの鍵になります。
ちょっと単純すぎますが(笑)、こんな感じで最終的なテーマである「チームワークの大切さ」へと話を持っていけるわけです。
バディもののキャラの例
- NANA
- うしおととら など
例えばSFファンタジーモノなんかに出てくる主人公は割と人間的には「普通」なタイプが多い。
舞台設定が奇抜な分、その中で「普通の人」の心理がどう動くかだけでも面白いから。読者も感情移入しやすいですしね。
- 新世紀エヴァンゲリオン
- 進撃の巨人
- 約束のネバーランド など
逆に学園モノなんかに出てくる主人公は「意外性」がある「トンデモ主人公」の方が面白い。こっちの感情移入はむしろ周りの人間の反応で表現することができる。あるいは読者自身が「ツッコミ役」になることで成立する場合も。
- かぐや様は告らせたい
- 坂本ですが? など
これもいわゆる設定から生まれる「ギャップ」を利用したストーリー作りと言っていいかもしれませんね。
このようにキャラやストーリーの意外性は読み手にインパクトを与え、印象に残らせるのには大事なポイントだと思います。
が、ここでその「意外性」について、ちょっと否定的な意見を語っている作家さんもいます。
少しご紹介しましょう。
漫画家 藤田和日郎さん(うしおととら、からくりサーカスなど)
新人は、しょっぱなから意外性を持ってきたがるんだ。漫画がこれだけ多くなってきているから、当たり前のことは「テンプレート」と言ってバカにされる。
だから新人は「そういうのは飽きられてるじゃないか。ありきたりだ。」と思って、意外性から始めちゃう。
そういう子たちに俺は言ってやりたいんだよね。「君は自分の作品を読者に読んでもらって、どういう「読後感」を持ってもらいたいんだい?」てな。
要するに「意外性」ばかりに気を取られて「投げっぱなし」の漫画になってしまってる作品がよくある、という事です。
確かに、意外性があるからと言って「主人公が最後までイジメられるだけの漫画」や「事件の犯人が最後までわからないミステリー」なんて誰も読みたくないですからね。
僕の意見と矛盾してるように見えますがそうではありません。僕の言ってる「意外性」とはあくまで「話のとっかかり」のことで、自分のことを全く知らない他人に、自分という存在に気づいてもらうためのテクニックの一つにすぎないのです。
いわゆる料理で言う「スパイス」のようなもの。あくまで「メインの味」ではありません。
振り向いてもらった後、またすぐ向こうへ行ってしまわれないように話を面白くするテクニックはまた別の話です。これも記事にしたいと思います。
この「意外性にとらわれ過ぎて話が取っ散らかる」のを防ぐためにはやはり「テーマ」をしっかり作るという事が大事になってきます。
テーマがあやふやなまま、ただ単に「意外性のある漫画」を描こうとすれば藤田さんの言う「読後感の悪い作品」になるだけ。逆にテーマがしっかりしていれば話が散らかりそうになった時に「作品を見直す冷静さ」を持つことができる。
テーマとは、道に迷ったときに自分の行くべき方向を示してくれる「道しるべ」のようなものなのです。
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日常生活の中からアイディアのヒントをつかむ
まあ、話作りの大まかな流れはわかったよ。
でもその前に「アイディアそのもの」の出し方がわかんないんだよ。
頭で考えてるだけじゃ出てこないし。
どうやったら「ゼロ」の状態からアイディアを生み出せるのか、それを教えてくれよ。
管理人だって天才じゃないし、考えただけで出るようなもんじゃないの。
それができるくらいならとっくに連載して売れっ子漫画家になってるわよ。
ぐほおっっ・・い‥痛いぞ‥なんだか心が‥心が痛いっ…。
確かに、漠然と「意外性」や「真逆」などと説明しましたがそれは上に書いたように「テクニック」のひとつであり、アイディアの出し方にはなりません。ではどうやって何もない所からその元になる「アイディア」をひねり出すのか。これについて解説、というか提案をします。
というのはこれはあくまで僕の個人的な考え、そして実際にやってきたやり方だというだけです。他にもいろいろ方法はあるでしょうからそれを踏まえたうえで読んでいただきたいです。必ずしもこうしろというわけではありません。例としてこんなのがあるよという「提案」のつもりで書きますので皆さんもそのつもりで読んでください(笑)。
まず、何もない所からアイディアをひねり出す方法は・・・レイコ先生の言う通り、ありません。
これは僕に才能がないからというわけじゃあないと思います(そうと信じたい(笑))
もうね、これだけ漫画作品がたくさんあると、全くのゼロから斬新なアイディアなんて出ないんですよ。マンガだけでなく小説や映画なんかも入れると「物語」なんてそれはもう「天文学的な数」に上ります。
どんな天才漫画家も、ゼロからアイディアが生まれたわけではないでしょう。まあひょっとしたら「いや俺はゼロから生み出したぞ」という超スーパー天才もいるかもしれませんが、普通の人にはそんなことはできません。
必要なのは「観察力」
おそらくほとんどの人が「今までの経験や知識」、あるいは日常の些細なことからの「気づき」によってアイディアを生み出しているのです。
いわゆる「アイディア商品」というヤツもそうです。「主婦のアイディアで数億円!」なんてよくやってますが、あれもごく普通の主婦の方が「日常生活の中」や「家事をしている最中」などに「こうだったらいいのに」という願望が気づきになり、発明へと繋がっていった例です。
まさに日常生活は「アイディア」に満ち溢れています。要はそれに「気づけるかどうか」。
日ごろの「観察力」が成功のカギとなってくると思います。
通勤通学の電車の中
ほとんどの人が毎日のように通勤や通学をしています。
会社や学校に着くまでの間、皆さんは何をしていますか?電車の中なら大体の人が今はスマホなどをいじって時間を潰してると思います。僕に言わせればもったいないことこの上ないです。
電車のなかほどアイディアにあふれた場所はないとさえ思ってます。それこそ老若男女いろんな人が電車に乗り込み、ほんの一瞬とはいえ同じ場所で空間と時間を共にするわけです。
一人一人を観察するだけでもとてもいい勉強になります。その人のしぐさ、着てる服、持ち物などにもその人なりの個性があるはずです。まさしく「人間観察」にはもってこいの場所です。(ただあまり一人の人をジロジロ見てると不審がられますから迷惑にならない程度にね。特に男性が女性をまじまじ見るのは明らかに不審者です(笑)。)
そしてここからが僕独自のアイディア掴み方法です。
その車内にいる人たちをキャラクターにして、物語を展開させるのです。
あるいはあの赤ちゃんがいきなり喋り出したら・・
あのおばあさんが車内で踊り出したら・・
など、突拍子もないシチュエーションで物語を作ります。
それに対するみんなのリアクションを想像するのです。
あるいは
同じ「緊張」でもこの二つではそのドキドキ感が全然違うはずです。
もちろん電車の中だけでなく街を歩いてる時も、周りの人をキャラクターにして僕はよく物語を作ります。
超有名芸能人が現れたら・・
一人の人以外の全員が動きを止めたら・・など
様々な状況を想像して話を作ったりします。
このように「日常にひとひねり」加えることで波風を起こす。まさに静かな水面に石を投げてそこから生まれる「波紋」を想像して楽しむのです。
これもアイディアを生み出す一つの方法だと思います。
このやり方で生み出した自分の作品もあります。
思いついたらすぐ書き留める
その中で面白いアイディアを思いついたらすぐ書き留めること。
そのために常にメモと筆記用具は持ち歩いていた方がいいです。思いついたとしても人はすぐ忘れてしまいます。
すぐに忘れるアイディアなら大したアイディアではないという人もいますが、たとえその時は使えなくっても、あとで別のアイディアと組み合わせてまた別の面白さが出たりするものがあるのです。
せっかく思いついたのならできるだけ保存しておきましょう。シチュエーションや日付なども詳しく書いておくと思い出しやすいですね。
歩いてる時など、書き留める時間がない場合はスマホなどの音声録音機能を使って、概略だけでも録音しておくといいです。
スター・システムを活用し、組み合わせの中に新たなアイディアの種を見つける
皆さんは「スター・システム」という言葉をご存知でしょうか。
元々は演劇や映画などの工業分野において、一人のスター(有名人などの主役)をメインに、そこから配役やスタッフ編成、宣伝方法などを決めていく「総合的なプロジェクト」のことでした。もちろん今でもやっているところはあるでしょう。
つまり作品うんぬんよりも花形俳優をメインに全てが動いていく、というシステムのことです。
そこから転じて、マンガの世界にもこの「スター・システム」は存在します。ただし漫画で言うスター・システムは、キャラクターを俳優ととらえ、違う作品に同じキャラクターを登場させるシステムのこと。
それをはじめにやりだしたのはあの漫画の神様「手塚治虫」さんです。
手塚さんは自身のキャラクター(ブラックジャックやひげオヤジなど)を、いろんな作品に登場させています。以来他の作家さんもこのスター・システムを使って作品を描いたりしていました。(最近はあまり見かけないかもしれませんが。このやり方は一人で連載何本も抱えた昔の作家さんがよく使ってた手法でもあります)
ただ登場のさせ方は作家によってさまざまで、ブラックジャックの場合はまさに「ブラックジャック」として登場しているのですが「同じ顔」でも「別の人格」として登場させている作家さんもいます。
このように「キャラクター」を一個の人間と考えて、自分の作品に出演してもらう俳優のように決めていくわけです。
そうすると「こいつはこの作品には合わないな‥」とか「でも逆に合わないからこそこいつを登場させるのも面白いかも・・」と、作品と俳優を組み合わせていく中でそれぞれに違ったストーリーが生まれ、新しいアイディアも生まれやすくなるというわけです。
まとめ
いかがでしたか。まだ他にも言いたいことはありますが長くなるのでこの辺で。
要するにアイディアづくり、ストーリー作りにおいて大切なことは
あくまで作者がそのシチュエーション、つまり「外側」の部分を提供することにより、そこから自然発生的に生まれる化学変化を見逃さない
という事だと思います。
ストーリーを最初からす最後まですべて決めてしまうやり方は「先が読める」「予定調和な作品」を作ってしまう結果となり、よほどのことがない限り成功しないと思います。
私も最初に結末を思いついて、そこに行きつくためにけっこう無理な展開とかを出してしまい編集さんに「無理やりつじつまを合わせた感じの話だね。」と言われたことがあります。
それからは「テーマ」と「キャラクター」を決めたら結末はもう考えないことにしました。
そのうえで「日常生活の中での気づき」を大切にする。 普段の何気ない生活の中で「気づいた」アイディアの中にキャラクターを放り込むことで、作者も思いもつかなかった展開が生まれることもあります。
そのためにはやはり常にアンテナを張り巡らし、些細なことも見逃さない「観察力」が必要なのです。
ストーリー作りにはまだまだいろんなやり方があるのでまた別の記事で書こうと思います。
ではまた。
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