バトル系マンガなどに出てくる、キャラクターたちの体や腕から、何やらわけのわからんエネルギー波が出たり、それを相手に向かって放つことによって敵を倒すなど「ドラゴンボール」のかめはめ波に代表される「必殺技」。
カッコよく決まれば画面に迫力が出て、キメゴマとして漫画の魅力を最大限に表現してくれます。
今回はその「必殺技」などをどうやって表現するかについて書いていきましょう。
スポンサーリンク
何せ現実にはあり得ないものを描くわけなのでその表現方法は様々。こちらも背景同様「処理の引き出し」をたくさん作って状況に応じて使い分けをすると、読者にも「読みごたえ」を与えることになるのでいろいろ吸収して自分の作品に役立ててください。
アナログ ペン画で描く必殺技
まずはペン画での表現方法。
基本形としてはやはり手から出たエネルギーをためにためて相手に放つパターン。この「球体」の大きさを変えることでいかにすごいエネルギーがたまってるかを表現することもできます。
基本形
エネルギーのたまり具合をフリーハンドで「円」をなぞりながら表現します。
人物の後ろ、地面に「影」を大きくつけることで「光」を表現します。
さらに「効果線」を付けることで勢いと迫力を演出します。
この効果線のちょっとした「コツ」として、エネルギー弾から離れた線はできるだけ太く、近い線をできるだけ細く描くと「影」だけでなくこの「効果線」でも光を表現できるのと、読者の目をより「見せたい部分』に集中させることができます。
つまり「流線」でありながら「集中線」と同じ効果が出せるわけです。
試しに全部が均等な線と比べてみましょう。
最初の絵の方が、迫力と目線誘導ができてると思いませんか?真ん中のエネルギー弾が、より浮かび上がって見えていると思います。
ちょっとしたことですが、「効果的な演出」として、ぜひ活用してください。
あとは、たまったエネルギーの球体を線で描く方法や、フラッシュ状に描いてエネルギーの強さを強調する方法もあります。
手から出るビーム上のエネルギーも、ただ一本線で描くのも単調なので、いろいろバリエーションを加えます。
だんだん細くなっていくパターン。
炎のように飛んでいくパターン。少しテクがいりますが、生き物のように相手に向かっていく感じは迫力が出ていいと思います。
稲妻のように飛んでいくパターン。
放射状にエネルギーを放ちながら飛んでいくパターン。
これはそれこそ「ドラゴンボール」でよく使われたやり方ですね。描き方としては、新たに消失点を作って、そこをめがけて曲線定規で描くか、自信がある人はフリーハンドで描いてもいいです。
スポンサーリンク
魅せ方、構図によって「威力」を表現する
次はこういうシーンを、どういう構図で描くとより迫力が出るか、カッコいい魅せ方について考えていきます。やはりこういった「見せゴマ」シーンでは、型通りのコマや構図ではその迫力も半減してしまいます。
シーンの魅力を最大限に発揮する構図を考えなければなりません。
①キャラを小さくすることでエネルギーの巨大さを強調
今までご紹介した見本のような構図だと、エネルギー自体は表現できてもそれがいかにものすごい力かあまり伝わりません。
そこで大きなコマ内でキャラをできるだけ小さくし、球体のデカさを強調するなどして表現します。さらに周りの岩などがその影響で圧迫されたり、破壊されたりしている表現を足すと、いかにすごい力がたまってるかが表現できます。
そしてこの場合、構図はいわゆる「アオリ」の方が迫力が出ます。
②放たれた力の表現方法
逆に、腕から放たれた「力」が相手に向かって飛んでいく時の構図として最適なのは「俯瞰」ですね。そして読者の目線は右から左へ動くので、右から左へ放つ方が自然です。
下から上へ放つ場合もありますがどうしても「引力」の関係で上に行くに従って力が弱まるイメージがあるので、表現としてあまり効果的とは言えません。これはたとえ「宇宙空間」であっても同じです。宇宙だから引力関係ねーじゃんと思うでしょうが、人間の「意識」というものはどうしてもぬぐえないものです。上から下へ放つ方が「力が強そう」に見え、「勢い」が表現されるのです。
できる限り上から下、そしてキャラの大きさも放つ側と放たれる側で大きさを変えた方がいいでしょう。放つ側を右において大き目に描き、相手を小さめに描くと対比で力強く見えます。
反対に、相手が放ったエネルギーがこちらへ向かってくる場合は逆に「アオリ」にして、上から降ってくる(落ちてくるようにすると)迫力が出ます。こちらは勢いというより「力の大きさ」の表現ですね。
近づくにつれてだんだん「力」が大きくなっていくと、迫力を出すことができます。
以上、ペン画で表現できる「必殺技の表現方法」の基本形でした。
ここに描いたのはあくまで基本なので「必ずこうしなきゃならない」わけではありません。こういうシーンが何回も出てくるのなら、ひとつのやり方にこだわっていては読者も飽きるし、変わり映えしない漫画になってしまいます。時にはセオリーをあえて無視するのも大事だと思います。
考え方のポイントとしてはいかに画面を引き立たせるかにありますが、もう一つ大事なのは読者の読む「リズム」を邪魔しないこと。皆さんもそうでしょうが、リズムよくポンポンと読ませてくれるマンガは、いかに時間が経っても疲れを感じず、次々と読みたくなるものです。
逆にリズムの悪いマンガはたとえ話が面白くても、あまり先を読もうという気になりません。特にこういった「バトル物」はリズムが非常にモノを言います。
読者に気持ちよく読んでもらう工夫をするのも「作者」の仕事ですからね。
読者が「右から左に読む」ことや目線を集中させる流線の描き方などを参考に、上手に読者の目線を誘導し、それこそ読者を「踊らせる」ことができればあなたも立派な『漫画コンダクター(指揮者)』です。
次回は、『トーンで表現できる必殺技の表現方法』について書きます。
スポンサーリンク
コメント