アシの仕事は描くだけじゃない。同じくらい技術のいる仕事 漫画アシスタント体験記 第9話

tone 漫画アシスタント体験記

 

 

 初めてのトーン作業

 

しばらく雑用と軽い背景ばかりやっていた私に、ついに回ってきました第2の難関 トーン作業 です。

そんな大袈裟に言うことじゃない?まあ確かにそうです。 でも当時の私にとっては確実に難関でした。やることは大したことではありません。ただカッターで貼る範囲分だけ切り取って貼るだけです。 それでも少しコツがいります。

切るのは下の原稿切らないように気をつけるだけです。(まさかと思ったあなた、実は結構やる人います。幸い私は数々の失敗のあとで気をつけてたのでやりませんでしたが(笑。)そのあと原稿に貼りつけて専用のヘラで固定するのですが ただゴシゴシやっても中に空気が入ってる場合や、力任せにやることでトーンについている糊が熱を持ってしまいそこからはがれやすくなります。 よく私も注意されました。

 

コツとしては、中の空気を中心から外に向かって押し出すように擦ります。急いでシャカシャカやらなくてもゆっくりしっかりやればくっつきます(締め切り前で急いでる時以外)。テクニック講座にも書いてるので参照して下さい。

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そしてただ色つけのために貼るトーンはそれでおしまいですが、トーンにはもう一つ「効果的演出」のために「削る」という作業が必要になります。

これもやり方についてはテクニック講座に書いてるので参照してください。

トーン作業はこの「削り」ができて初めて一人前です。 そりゃそうですね。切って貼るだけなら小学生でもできます。まあ綺麗にできるかどうかは別だけど。

そしてこの「削り」作業は、基本的な技術だけでなく作家さんの好みによっても削り方、効果の入れ方が違うのでなかなか最初は難しいです。もちろん回数こなすことで自分の技術が向上すれば臨機応変に合わせることもできるので、やはり練習あるのみです。

ただやはりこの当時の私にはその技術がほとんどなく、独学で練習はしてきたもののやはりプロの現場で通用するものではありませんでした。

小さなコマではあったもののやはり削り方が雑で、綺麗に削れません。何度もまたリテイクを食らい、しかも何枚も失敗しては貼り直すので汚れるし時間は食うし、挙句に「トーンもタダじゃないですからね。」とボソッと自分でもわかってて「申し訳ないな」と思ってた部分を指摘される始末。

またしても、トーンじゃなく残り少ない自信の方を削り取られ(←だれうま)、この時の私はもうただひたすら「帰りたい」の一言で頭の中はいっぱいでした。

チーフと呼ばれるアシスタントのリーダーが、険悪な雰囲気を和まそうといろいろギャグを言ったりして、一旦は場が和む。でも私はそんな雰囲気にも積極的に合わせることができず、カラ笑いばかり。なんとか付いていこうと頑張ると話についていけず、話に合わせてると仕事が進まない(笑。

時が経てば立つほど簡単なコマはなくなっていき、あとはそれなりに技術のいるコマばかり。先輩アシに手ほどきを受け、四苦八苦しながらの作業はもはや邪魔してるとしか思えない。いやー今思い返してみてもあの時の空気は最悪。ほんとに時間が長く感じました。延々と終わることない辛い時間・・。

飯も食ったかどうかよく覚えてな・・そうだなんかピザを頼んでたかな・・普通ならとても腹の足しにはならない量の(笑。でもその時の私は飯なんかほとんど喉を通らない状態だったからかえってよかったけど。

そうこうしてるうちにそれでも時間は進みいよいよ作業は佳境へ。そこで私は、また新たな敵と戦うことになるのです。それは、作家さんでも新しい難関作業でもなく・・そう、「睡魔」という敵との戦いでした。

 

つづく

(この体験記は不定期更新となります。次に続いたり、しばらく後だったりします。ご了承ください。すぐ続きがお読みになりたい方は、こちらをクリックしてください。)

アシとして初めての徹夜 イメージの違いとは? アシスタント体験記第10話

 

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