プロの洗礼
初めてのリテイク(やり直し)でしたが、 私はまだこの時は「頑張ればなんとかなる」と思っていたので、自分なりに細かく描き直したつもりで、再度原稿を先生に見せました。 しかし・・
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先「まだ粗い。 木の枝の生え方とか、葉っぱの角度とか、考えて描いてます?」
私「生え方・・ですか・・一応考えてるつもりですが・・」
先「もう一度です」
更なるリテイク。 さあここから、どれだけ時間が経ったのかわからなくなりました。
とにかく、やってもやってもOKが出ません。 しまいには先生より先に先輩アシスタントに見せ、そこでOKが出てから見せるように言われましたがここでもなかなかOKが出ず。気持ちは焦るばかり。
あげくには描いてるところを見られながらの指導。先輩アシの仕事の手を完全に止め、申し訳なさと情けなさで早くも汗だくの私。 まさか一コマ目の木一本で、こんなにも苦労するとは思っても見ませんでした。
そしてようやく先輩OKが出て、先生に見せると、
「うーん・・まあ、いいでしょう。では、次。」
なんとも中途半端なOK。 この時点でもうすでに私の心は半分折れかけていました(笑。
次に頼まれたのは、2センチ×5センチ位の大きさの、何でもない住宅の何でもない垣根、塀、玄関。指定があるわけでもなく資料をもとに描き起こす、というもの。
小さいコマでしたが、先ほどの例があるため必要以上に緊張していました。
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この頃はまだデジタルで絵を描く、という環境はなく(あるところはあったかもしれませんがこの仕事場はオールアナログでした。)まず下描きを鉛筆線で描き、作家さんのOKが出たあとにペン入れという流れ。しかしこれがまた時間かかりました。
なにせこのあとのペン入れは一発勝負。 デジタルのようにすぐ線を消して描き直す、ということができません。下描きも慎重、チェックも必然的に念入りになります。
そこでまた角度がおかしい、大きさがおかしい、パースが狂ってる、あ〜でもないこうでもない、チェック、チェック、またチェック。 いつまでたってもペン入れに入れません。
このあたりから、「自分はとんでもないところへ来たんじゃないか・・本当にこの世界でやっていけんのかな・・」まだ仕事を開始して数時間しか経っていないのに、早くも自身の選択の甘さを後悔し始めていました。
断っておきますがこれはあくまで私のケースで、当然全ての仕事場がこうということではありません。それに、私にもっと実力があればこうはならなかったはずです。
今考えれば何もそんな特別なことを言われたわけでもありませんし。ただ単に根拠のない自信を持っていたズブの素人が、プロの世界で当たり前のように鼻っ柱をへし折られた、というだけの話です(笑)。
何度目かのチェックの後、ようやくペン入れOKが出ました。ホッとしたのもつかの間、 すぐにペン入れにかからなかればなりません。 もうすでに下描きで相当時間を食っています。急いでペンを用意し、いよいよ初めてプロの原稿に自分の線を描くんだという意気込みと、
早くしなければという焦りの中・・私はまた やってしまったのでした・・・。
つづく
(この体験記は不定期更新となります。次に続いたり、しばらく後だったりします。ご了承ください。すぐ続きがお読みになりたい方は、こちらをクリックしてください。)
今となっては笑い話にもならない? 漫画アシスタント体験記 第5話
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