何もかもが初体験
「なんかちょっと・・夢なくすなあ・・あんな有名な漫画でも、こんなところでやってるなんて・・意外に稼げてないの?」
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この時の私が今そこにいたら二、三発ぶっ飛ばして、正座させて説教ですが、
当時はそんな生意気なこと本気で思ってました。
いや、今はその作家さんもものすごい豪華な所に住んでるそうなのですがこの時はまだだった、というだけです。
今はそれでも普通に思えるのですが当時の私はとにかくイメージでしか捉えてなく、テレビに出てくる売れっ子作家さんたちは豪華なマンションや一軒家に住み、広い仕事場で仕事をしてると思い込んでました。ですからあまりに地味なイメージのするアパートの姿に、内心ちょっとガッカリしてしまったのは本音です。無知で恥知らずな私をぶってください 心の中で!)
入口はどうやら通りの反対側らしく、錆びた自転車が粗大ゴミとして無造作に捨てられてる空き地を通り玄関の方へ回ると(呼び鈴もなかった気がするなあ・・あったけど使わなかったのかな)少々色の落ちたドアをノック。
中から「はーい」と声がして、 Sさんが、出迎えてくれました。
「こんにちは!本日からよろしくお願いします!」
目いっぱいの笑顔!そして元気!
「あ、どーも」
目を合わせようとしない、そして消え入りそうな返事。予想通りの(笑)挨拶を終え、仕事場にあがる私。どこにでもあるフツーーーの台所を過ぎ、8畳ほどのスペースの和室に通されると、 真ん中に向かい合うように設置された机が五つ。
そこには既に、先輩アシスタントさんが2人仕事をしていました。
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先「今日から一緒にお仕事する、○○さんです。」
私「よ、よろしくお願いします!」
皆さん「どーもー。」「よろしくお願いしますー。」
(よかった・・普通の人たちだ・・)ホッとする私。
先生の正面の席に着くと、早速初仕事の依頼。
先「このコマに、ベタで木を描いてください。」
プロの生原稿を渡され、緊張しながらもいよいよ漫画業界で仕事を始める興奮と、やってやるぞと気合も入り、見本の刷りだしを見ながら、見よう見まねで筆ペンを走らせました。数分後・・自分なりの努力の結果、割と上手く出来たつもりで、
「出来ました!よろしくお願いします!」
これまた必要以上に元気な声で原稿を先生に渡しました。
机に突っ伏すように原稿を描いていた先生が、おもむろに顔を上げ、私の原稿を受け取り、
しげしげと眺めていたかと思うと・・
「粗いですねえ・・」 と一言。
「もう少し細かめに、よく見本を見て描いてください。」
私「は、はあ・・すみません。」
初めての仕事、初めての原稿、そして初めてのリテイク(やり直し)。(ま、まあ・・初めてだからな・・)
この時の私は、はっきり言って軽く考えていました。 確かにプロとしての技術はまだまだだとしても、それでもそこそこ自分の絵に自信はあったし、少し勉強すれば通用するだろう、と。しかし、その考えが鬼甘だということに、開始早々30分ほどで、心底思い知らされることになるのです。。
つづく
(この体験記は不定期更新となります。次に続いたり、しばらく後だったりします。ご了承ください。すぐ続きがお読みになりたい方は、こちらをクリックしてください。)
リテイクリテイクまたリテイク! 漫画アシスタント体験記第4話
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