目指せデジアシマスターへの道? 漫画アシスタント体験記 第49話

アイキャッチ10 漫画アシスタント体験記

こんにちは、少し涼しくなってきたとはいえまだまだエアコンは手放せませんね。

暑かったのでやめていたジョギングをそろそろ再開しようか悩んでいるOYUKIHANです。

 

さて前回の続きです。

 

埼玉県の一軒家で仕事をしている作家Oさんのもとへ、5日間の泊り仕事でお世話になることになった私。初めは順調に何の問題もなく作家さんの要求にしっかり答えた「プロアシ仕事」をこなしていた私でしたが、途中で背景仕事がなくなってしまいいきなり「デジタル仕事」を任されることに。

しかし私はまだ当時パソコンで絵を描く、仕事をするなど考えてもいなかったため、デジタル作業に関しては一切興味も知識も経験もありませんでした。

にもかかわらず「勉強」のためと称して半ば強制的にパソコンの前に座らされる羽目になった私の頭の中に、あの忌まわしい記憶が‥。

まだ何の経験もなくいきなりプロの現場に飛び込んだ挙句カウンターパンチを食らってすっかり自信喪失させられたあの『漫画アシスタント初日』がよみがえります。

果たして私にとって初めてのデジタル漫画仕事、一体どうなってしまうのか・・

 

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レイヤーって何? コミックスタジオ? どこのスタジオですか‥?

 

とはいえ、あまりの私の狼狽ぶりにさすがにOさんも「ヤバい奴に頼んじゃったかな‥」と少し後悔したのか

 

「まあまあ・・そんな緊張しなくていいよ。いきなりそんな難しい事させないから。」

 

と、少し困惑気味に苦笑しながら作業の説明に入ります。

 

Oさん「まず・・これ、コミックスタジオって言うんだけど知ってる?」

 

パソコンの画面に映っている漫画制作ソフトを指さします。

 

私「な、名前だけは・・」

 

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今現在、パソコンで漫画を制作するソフトでプロが使っているのは「CLJP STUDIO(クリップスタジオ)と言いますが、当時はその以前のソフト「COMIC STUDIO」が主流でした。

私は本当に「名前だけ」しか知りませんでした。マジでどっかの漫画スタジオかと(スタジオジブリ 的な)思ってたんです。まあ名前の由来はそんな感じかもしれませんが。

 

Oさん「とりあえず機能だけ一通り説明するね。これがレイヤーパレット。これをクリックしてアクティブにすると描画ができるようになる。そしてこれがツールパレット。ペンや消しゴムなど、切り替えて使う。そしてこれがペンタブ。これの先っちょの部分を、本体と接触させることで作業ができる。ペンを描いたり消したり、トーン貼るのも全部このペンタブでできるんだ。」

 

レイヤーパレット

 

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ツールパレット

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ペンタブレット

 

もう「宇宙語」を聞いているようでした。

当時の私は「レイヤー」さえ知らないズブの素人でした。いわゆるセルアニメで使っていた透明のシート(セル)がパソコン上に重なっているという事なのですが、アナログ漫画畑で育った私にはイメージすることさえ難しかったのです。

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一通り機能を説明したOさん、私のあまりのちんぷんかんぷんな様子に本当に後悔してる様子でした(笑)。

結局、デジタル仕事でももっとも簡単な作業、「ベタの塗りつぶし」を任されることに。

全ページのキャラの髪の毛、服などでベタマークが入ってるところに「塗りつぶしツール」を使ってベタを入れる作業です。

こうして「ペンタブ」を持つのも初めて、ソフトを動かすのも初めてなド素人による「はじめてのおつかい」ならぬ「はじめてのベタ塗り」が始まりました。

 

 

完全な「文系」によるいよいよ恐怖のデジタル作業!しかしいざやってみると…

 

ペンタブのつるつるした感覚に戸惑いながらも、本体の上でペンを動かすとカーソルがその通り動きます。

まさに「こいつ・・動くぞ!」的な感動に酔いしれながら(マウスでも動くだろ(笑))塗りつぶしツールを選択、カーソルをベタマークの所に持っていきクリックすると、それだけで一瞬でベタが塗れてしまったのです。

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私は心の中で「おお!」と感激していました。

今まではベタ塗りと言うと、フチを丁寧になぞってから筆ペンでまさに「ベタベタ」塗りつぶす作業でした。時間と根気、ムラなく塗るにはある程度の技術もいる、「たかがベタ塗りされどベタ塗り」と言った、単純ですが非常に繊細な作業だったのです。

 

それが、クリック一つで一瞬で塗れてしまう・・こ・・これは・・魔法か?今までの苦労はいったい何だったんだ‥漫画がこんなに簡単に作れてしまったら将来アシスタントなんていらなくなるんでは・・?

 

私はデジタル作業の「あまりの楽さ」に感動と困惑を覚えながら、指定された場所に一つ一つベタを入れ塗りつぶしていきました。その間、保存の仕方やページ送り機能など知らない機能を教わりながらそれでも何とかもう少しで終了という所までこぎつけます。

最後のページにたどり着き、それまでと同じように主人公の髪の毛にカーソルを当て、クリックした私。と、今まで順調に塗れていたベタ作業、ここでとんでもない事態に遭遇します。

 

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顔まで真っ黒!アナログなら逆にこっちの顔が真っ青になる重大事故発生!しかしデジタルだと‥

 

 

なんと、髪の毛だけでなく「顔」全体にベタが塗られてしまうことに!

 

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「いやああああああああああああ!」

 

 

ただ、これ実はデジタルでは結構あるあるなんです。デジタルにおける「塗りつぶし」とは、まさしくワンクリックで全体を塗りつぶしてしまうもの。なので必要な部分だけを塗りつぶしたい時は「選択範囲」を取ったり周りが線で囲まれた「限られた範囲」を設定する必要があります。

何もせずにクリックすると、線で囲まれている場合はそこだけが塗りつぶされますが、キャラ線がうまくつながってない場合、そこからベタが漏れてしまって余計なところにもベタを入れてしまうことになるのです。

 

しかし当時の私はそんな機能など知りません。頭の中はアナログのイメージのままだったため、

心臓が止まりそうになるほどのショックと恐怖に襲われていました。

アナログの世界でキャラの絵を汚してしまうなどという行為は、アシスタントとしてはご法度です。インクを飛ばしただけで怒る作家さんもいます。下手をすると「描き直し」になる可能性もあり絶対やってはいけないことなのです。

それが「顔全体」を真っ黒にしてしまったのですから。いきなりの大チョンボ!土下座でもして謝らなければ・・せっかく先ほどまで楽しい気持ちで仕事をしていたのに・・まさに「天国から地獄」です。

 

しかし・・ふと私は思いつきました。先ほどOさんに言われた「レイヤー」のお話。消しゴムツールに切り替え、恐る恐るベタを消してみることに。すると・・・

 

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「き・・・消えるっ!しかも、キャラ絵は無事だっ・・」ざわ・・ざわ・・

 

何の問題もなく、はみ出た部分のベタだけが綺麗に消えてくれたのです。

つまり、ベタを塗っているのはキャラ絵の上に敷いた透明シートを黒く塗りつぶしている状態。

なので、その下にあるキャラ絵のレイヤーに被害が及ぶことはなく、はみだし部分を消せば無事事なきを得るのです。

(まあその前に単純に「ひとつ前の作業に戻る」を選択すれば何の問題もないし、塗りつぶしツールで「透明」をクリックすれば一発で消せるのですが・・当然この時の私はそんなこと知りません。消しゴムで消すしか方法が思いつかなかったのです。)

 

ともあれ、九死に一生を得た気分で(大げさ)、与えられた仕事を終え、意気揚々とOさんのチェックを受けます。

 

しかし・・・

 

Oさん「塗り忘れがけっこうあるよ。」

わたし「え・・・?」

Oさん「あとレイヤー間違えてる。それと「キャラ線」にベタ流し込んじゃってるよ」

 

たかがベタ塗り、されどベタ塗りはデジタル仕事にも生きていました。

単純にワンクリックで流し込んでるだけなので、細かな部分にベタが入って無かったり、あとなぜだか別のレイヤーと間違えて塗ってたり。思いもかけないミスをしてしまうことがあります。

しかもなかなかミスに気づけない、というのもデジタル仕事の特徴です。

あとこれは少し説明が難しいのですが、ペンタブ本体にタッチしただけでベタが入ってしまうため本来入れるべきところじゃないところにベタを入れる間違いをしてしまったりするのです。

 

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特に悪影響はありませんが気にする人は気にします。後でベタ部分だけを選択範囲とって加工したい時に、余計な部分まで選択されてしまって加工しにくいことがあるからです。

 

便利なだけに、その機能をいかんなく発揮するためにはやはり個人の技術や「間違いに気づく」観察力もデジタル作業には必要になってきます。いやもちろんアナログ仕事でもそれは必要なのですがデジタルではまた違った観察力が必要なんだなとわかりましたね。

 

 

デジタルプロアシ J君登場! デジ作業を1から教えてもらうことに!

 

そうこうしてる間に、時間差で別のアシスタントさんが出勤してきました。

 

頼まれていた資料を持ってやってきたアシスタントのJ君。この仕事場に通い始めて約一年ほどのレギュラーさんです。

私は「やれやれ、これでやっとデジタル作業から離れて元のアナログ作業に戻れるぞ‥」と

心の底から安堵していました。しかし・・Oさんから発せられた次の言葉。

 

Oさん「そうだ、J君さ、この○○さんに、デジタル仕事の基本、教えてあげてくれる?

○○さん、このJ君はまだ若いけどデジタル作業ではもう「プロ」と言っていいほどの熟練だからさ、わからないことは全部J君に聞けばいいよ。」

私「は・・・・?いや、背景資料持ってきてくれたんですよね。じゃあ僕はそっちで‥」

Oさん「いやそれは別の人にやらせるから。せっかくだし、もう少しデジタル出来るようになっとけば?J君なら信頼できるから、J君、頼むよ。」

 

もはや有無を言わせぬといった感じで、私は結局そのまま「デジタル仕事」の基礎の基礎をJ君から教わることになりました。

 

このJ君、専門学校出たての弱冠22歳。早くからパソコンに慣れ、それこそ「アナログで漫画を描いたことがない」という私にとってはまさに「新人類」ともいえる世代。

黒ぶち眼鏡にネルシャツ、絵にかいたような理系ビジュアル青年。

そんなJ君、私が「パソコンで絵を描いたことがない」と知るや彼は逆に

 

「へえ~(軽く笑)」

 

と、まるで化石でも見るような目で私を見てきます。そんなJ君に、マンツーマンでデジタル仕事を教わることになった私。

何やら別の緊張感をふつふつと感じながら、再びパソコンデスクの前に座り直す私でした‥‥。

 

つづく

 

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