作業以外の面で一番厄介だった現場・・。アシスタント体験記 第29話

asi 漫画アシスタント体験記

週刊漫画のアシスタント経験にも、そこそこ慣れてきて、ある程度の要求にもこたえられるようにもなってきました。

しかし、どんなに努力してもどうにもならないものがあります。それは「作家さんとの相性」です。

 

 

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女性作家は二度目・・でもあまり「普通の人」に当たったことが‥苦笑

 

私がこれまでお世話になった作家さんたちはみな週刊作家、いわゆる週一回出す漫画雑誌に連載している作家さんたちでした。プロ野球でいえば一軍レギュラー、先発メンバーに名を連ねているのと同じ。

漫画家を志す卵たちが必ず夢見る位置にいる人たちです。しかし漫画は週刊ばかりでなく隔週雑誌や月刊誌、隔月発売の雑誌や不定期の増刊号など、紙媒体だけでもその職業形態は様々。デジタルも似たり寄ったりでそれぞれのペースで仕事をしています。

サラリーマンに「異動」があるように実は漫画家にも「異動」があります。はっきりと「出世」や「左遷」と言えるようなものではありません(イメージとしては月刊誌から週刊連載になれば少しは「出世」のイメージもありますが週刊から月刊に移ったからといって即「左遷」というのとは違うように思えます)が。

もちろん、人気があまり芳しくなく、てこ入れのために異動したりする場合はありますが、作家さん自身の都合であったり雑誌の都合であったりいろんな場合があるので一概には言えません。

私がその時お世話になってた方も、週刊から月刊に移ることが告げられました。仕事内容に変化はないのですが要するに月一回の連載になるわけですのでその「作業量」は全く違ってきます。今までは週3,4日のペースで月の半分、それでも何とか食える程度の収入でしたが月一連載となるとどんなにかかっても一週間から10日。要するにそれだけでは食べていけない仕事量です。

仕方ないので当時担当していただいてた編集さんに相談すると、その空いた時間に別の作家さんのところでお世話になるという選択肢もあるといわれました。いわゆる「掛け持ち」アシスタントです。

私が当時打ち合わせをしてた雑誌は隔週雑誌で、月2回発売。ただこれもまた新連載になるので最初は少しバタバタするかもしれないが、時間的余裕はまだある方とのこと。結局私は、月刊誌連載のアシスタントと隔週連載のアシスタントを掛け持ちでやることになりました。そして新しい仕事先の作家さんは女性でしかも当時の私より結構年下。そして初連載。そちらの担当さんからは「何卒よろしくお願いします!」とバカ丁寧にお願いされる始末。

またも新しい体験に少しワクワクもしましたが、何せ「女性作家」様には個人的にトラウマが(笑)。一抹の不安も少なからずあったのも事実です。

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見た目はカワイイ人だった・・見た目は。

 

仕事日当日。再び最寄り駅を出たところで電話。確かに、声は若そうでした。ただ・・何と言いましょう。いかにも「覇気がない」というか(笑)、ほとんど寝起きのような声での応対。まあ、漫画家さんだからそういうこともあるかな‥と思いつつ、待つこと十数分。トレーナーにジーパン、そしてやはりまさしく「寝起き」丸出しの表情でその作家さんは現れました。

私の方は、相手は年下とはいえ作家様。粗相のないようにと平身低頭でごあいさつ。「どうも!○○です!よろしくお願いします!」

作家様(以下)Tさん「あ・・はあ・・よろしくお願いします・・。」

わたし「・・・・・」。

一見した感じ、見た目は結構美形の方でした。すっぴんでしたが割と顔立ちの整った、しっかり化粧すればそこそこイケる感じの当時21歳。 その雑誌の連載陣の中でも女性作家のホープ的な存在。

ただその日は‥徹夜明け?とでも言いたくなるような髪はボサボサ、瞼ははれぼったく、うつむき加減のボソボソ声。早くもその先の仕事が心配になるような初対面でした(笑)。

 

以後ほぼ無言のまま仕事場へ。仕事場は結構豪華なマンションの5階。21歳の初連載の新人にしてはえらく羽振りがいい‥と思いましたが、何のことはない 言い忘れてましたが彼女はすでに人妻

そして旦那様は某有名週刊漫画雑誌の敏腕編集さま。タイトルを言えば誰もが知ってる超有名漫画を世に生み出した その筋では結構「やり手」で有名な方の、奥様だったのです。

そんな高級マンションで仕事をすることが初めての私は少し気後れしながら入っていくと、部屋の中にはすでにアシスタントさんが一人。

お互いに顔を見合った後、お互いが思わず声を上げていました。

 

そのアシスタントさんは、少し前に私が初カンヅメ経験をした時に、一緒に仕事をした仲間だったのです。この彼をH君としましょう。この彼はやたら明るい性格の人で、まあ良くしゃべるタイプ。我々は、思わぬところでの再会に驚き、喜び合ってるころ、作家さんは一人無言で机の前へ。

作家さんとアシスタントのあまりのテンションの違いに私自身戸惑いながらも知り合いがすでにいる気楽さで、一気に楽しい気分になっていました。

 

ところがその楽しさは‥本当にその最初の数日間だけだったわけですが……。

 

 

つづく

(この体験記は不定期更新となります。次に続いたり、しばらく後だったりします。ご了承ください。すぐ続きがお読みになりたい方は、こちらをクリックしてください。)

世の中には「合う・合わない」人がいるのは当然だけど‥。漫画アシスタント体験記 第30話

 

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