なんで漫画家になったの?ってくらい「リア充爆発」の作家さん 漫画アシスタント体験記第35話

アシ 漫画アシスタント体験記

ストイックすぎる作家さんのところでお世話になり始めて数か月。相変わらずMさんはうんうんうなりながら話を絞り出し、作画に入っても倒れそうになりながら作品に魂を吹き込んでいました。

その間我々はというと、アシスタント仲間が持ってきた昔のアニメ作品などを流しながら、結構楽しく仕事してました。夜遅くまでの拘束なので体力はさすがに必要でしたが、年齢の近い仲間との仕事で精神的には割と楽にやれていました。

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イレギュラーの単発仕事・・業界でも有名な「チャラ男」作家?

 

そんなある日、私の担当編集さんから「ヘルプアシスタント」の依頼が。以前も編集部へ行った際にそこの副編集長さんに頼まれ、急遽「カンヅメ」仕事を頼まれた経験がありましたが、今度は週刊作家さんのいつも呼んでるアシスタントさんが病気でこれなくなったための「穴埋めアシスタント」仕事。

こういうのよくあります。今はJ・A・Cさんの掲示板などで募集すれば結構すぐ人数は集まると思いますが、以前はアシスタントそのものが数が少なく、まして単発のヘルプアシとなればなおさら探すのに一苦労だったそうです。

だからこそ編集さん同士の「横のつながり」は大事で、担当の作家さんからアシの要請があるとまずは編集さん同士で情報交換し、空いてる人はいないかを確認するのです。

その流れで今回、同じ雑誌の編集さんから頼まれて別の作家さんのところに3日間だけ「ヘルプアシスタント」に行くことになりました。

その作家さんはSさんという男性作家。そこそこ中堅の作家さんで私も何回か作品を読んだことがあります。今現在お世話になっているMさんが「魂の作家」的な絵でガシガシ描き込むのと違い、こちらのSさんはなんというか「オシャレ系漫画家」といった感じで、線もキレイであまり描き込むタイプではなくイラスト的な洗練された絵が特徴の作家さんでした。

実はこの作家さん、業界でも有名な「イケメン作家」で、元サーファーという異色な経歴の持ち主。あくまで偏見を承知で言えば、漫画家を目指そうなんて言う人の多くは「リアル」の世界で満足した生活を送れてない人だと思う。←言いすぎ(笑)。でも少なくとも、学生時代からモテモテで人気があって、リア充爆発してるような人はそもそも「空想」することすら少ないし、それしか楽しみのなかった私などからすれば 憧れの生活ができてる人。ある意味漫画家なんて「自分じゃできないこと」を主人公にさせることで欲求を満たす、非リアの塊のような奴が目指す職業じゃないのと思っているので、Sさんのような人の存在が信じられなかったものです。

しかもそんな「リア充爆発」な人のくせに漫画家としてもある程度成功するなんて、あまりの不公平さに軽く神様を恨みたくなるってもんです。

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青山、高級マンション、サーフボード・・ここはいったいどこですか?(笑)

 

さていよいよヘルプの日がやってきました。仕事場は青山。もうこの時点で田舎者の私は気後れしてます。芸能人でも歩いてないかな‥などと周りをキョロキョロ見渡しながら教えられた住所へ向かうと、目の前にオシャレなレンガ造りのマンションが見えてきました。

それこそ本当に芸能人でも出てきそうな、高層ではないけど高級そうな、オシャレマンション。まさに僕ら庶民の「こんな街住んでみたい!」「こんなとこ住んでみたい!」の夢を完全に叶えたようなたたずまいに、圧倒されながらもちょっとムカつきながら(笑)、恐る恐る中へ入ります。

玄関で部屋の番号を押し、呼び鈴を鳴らすとしばらくしてインターホンからやたらさわやかでイケボな男性の声が。DJばりの軽快な声で

「お~聞いてる聞いてる!よーく来てくれたね!サンキュ!早速上がっといで!」

もちろん声の主はSさん。

ドアを開けてもらって中へ入るとそこは吹き抜けに。大きなエレベーターからこれまたやたらゴージャスに着飾ったお姉さまが降りてきます。場違い感丸出しの貧乏アシスタントがすれ違うのを見向きもせず。代わってエレベーターに乗り込み、そのお姉さまの残り香を嗅ぎながら仕事場のある3階へ向かいます。

 

「やーど―もどーも!急な話で悪かったね!Sですよろしく! まあ楽にして。友達の家に来たみたいな気持ちで、気楽に行こうよ気楽に!」

出迎えてくれたSさんは想像通りのさわやかなイケメン。ネックレスとピアス、朝黒の肌にキラリと白い歯が光る、「いかにも」な男性でした。

「は、はあ・・よ、よろしくお願いします。」

部屋に入ると、漫画家の仕事部屋で嗅いだことのないようないい香りが立ち込めています。12畳ほどの広々としたリビングの真ん中に机が二つ。Sさんの机は日当たりのよさそうな窓際にでんと置いてあったのでこちらはアシスタントの机でしょう。机の上のライトは球状の形をしたこれまたオサレなもの。

その周りには観葉植物、壁にはウエットスーツ、サーフボード、サーファーたちの大きな写真がいくつも・・。天井には飾りの扇風機、そして大きな棚には全部「アナログレコード」が入っています。

(な、なんじゃあこりゃあ~・・)

要するに「漫画家の家」とは到底思えないものが部屋一面に飾り付けてあったのです・・。

 

つづく

(この体験記は不定期更新となります。次に続いたり、しばらく後だったりします。ご了承ください。すぐ続きがお読みになりたい方は、こちらをクリックしてください。)

全てが別世界?目指すべき道?うらやましい‥ような‥そうでもないような‥アシスタント体験記第36話

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