また新たな仕事場 新たなアシ仲間 そして新たな発見とは? アシスタント体験記 第24話

samune1 漫画アシスタント体験記

いよいよ三つ目の仕事場、初出勤。不本意ではありながらも、新たな出発に多少のワクワク感を持って迎えられたのは初めてでした。

その理由は多少自分の中でも自分の背景技術に自信が出て、この業界でやっていけそうな気持ちになれたこと、そしてなにより次の仕事場が新連載、そして作家さんにとっての初連載、つまりアシスタントも全員が始めましての何もかも初めてづくし。今までのように自分だけが よそ者感 を持って仕事しなければならない状況じゃなかったという気楽さ故でした。

その現場はまたやり方が変わっていて 新たな発見の宝庫でした。

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全員が初顔合わせ みなさんはじめまして  

 

仕事始まりは一番初めのところと同じく夕方から。しかし今度は徹夜ではなく、完全昼夜逆転の仕事場でした。

またそれはそれで自分の体の調整が難しかったのですが、今度の仕事場は作家さんのはじめての新連載、アシスタントも色んな所から集められたほぼ初顔合わせの人たち。

しかもほぼ同世代の方がほとんどということで、個人的にちょっと「面白そう」に感じていたのも事実です。

いよいよ初仕事日。 作家さん自らが最寄りの駅で全アシスタントを出迎えるという異例の状況。 総勢5人のアシスタントを引き連れて近くのアパートへ。 またまた歴史を感じる風情でしたが(笑)、もはや慣れたもの。

改めてそれぞれが自己紹介をし、いよいよ作業開始です。

メンバーは作家さん(以後Oさん)とOさんの昔からの友達Kさん

以前の仕事場でお世話になったミリタリーオタクのMさん

他の編集部からの紹介でやって来た新人のNくんとAくん  そして、の五人。

漫画の仕事場での新連載の始まり方は現場や雑誌、週刊か月刊かによって違いますが新連載の作品の場合、仕事のスタートは大体 雑誌掲載2ヶ月くらい前が普通です。

その間になるべく多くの原稿を貯めておき、連載が始まっても慌てないようにするのです。 (まあ、といっても週刊連載だといくら余裕持って始めてもなんだかんだで時間が過ぎ、貯めておいた原稿もあっという間に底を尽きます。そのあとはもう自転車操業です。)

しかもここは全員が初めての現場ということもあり、その仕事場でのやり方、背景の入れ方、タッチの入れ方、トーンなどの処理の仕方まで全員がわかっていません。それらをすべて作家さんに確認してからでないと作業が進まないので通常よりも時間がかかる印象でした。

実際問題、漫画の現場でのキャリアだけで言えば 前述したMさんが一番長く、一応過去に連載をしていたこともありやり方は一番よく知っているので、作家さんも割と平身低頭。もともと低い腰をさらに低くして「よろしくお願いします!」なんて言っちゃったもんだからMさん気をよくしちゃって現場を仕切る仕切る(笑)。

私は「一応作家さんの友達がチーフのような形でいるんだからもう少し気を遣えよ・・」と心の中で思ったりしましたがMさんはそんなこと気にする人じゃありません。周りの人の席の位置から指示の出し方、誰がどういう背景を担当するかまで、自分勝手に決めてしまいました。

私にとっては先輩だし、大体の性格はわかっていたので「しょーがないなー」で済ませていましたが、あまり心良く思わない人もいるでしょうね。偏見恐れずに言うと、この世界こういう人、結構います。ただこの時は他の方もまだ若くあまり文句を言うタイプの人がいなかったのは幸いでした。 こういうことは「やりたい奴にやらしとけ」と思っていたのかもしれません。

なにはともあれ 私にとっては三つ目の仕事場。そして新たな発見の多い現場での作業、スタートです。

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早速トラブル?前途多難な新連載

 

この時はまだアナログの現場が多い時代で、ここもそうでした。もちろんパソコンは仕事場にありましたが仕事で使うというより作家さんのお遊びの道具でしかなく、パソコンを使って漫画を描くなんてことをまだあまり具体的に想像してませんでした。データとして保存とか、資料を保存しておくために使うことはあってもまさかパソコンに向かって絵を描く日が来るとは、この時の私は思ってもいませんでしたね。

まだほとんどまっさらな原稿にカリカリとペンを走らせる作業の繰り返しです。少しは慣れていたとはいえ、それでも新しい仕事場での初めての作業は緊張します。

キャリアに関係なく そこそこ大ゴマも回ってきたりしたので余計です。それでも舞台は学園ものだったので描く背景は校舎が中心。ある程度描かれた見本の背景を参考にしながら作業を進めていました。

上記したようにここは作業開始が夕方。17時くらいだったかな。そしてまず19時くらいに最初のご飯休憩がありました。その時はそれぞれが持ってきた弁当なりパンなりを食べることで終わりでしたがその次の休憩が必然的に夜中になります。 当然飯屋など開いておらず、コンビニ弁当を買ってくることに。

ジャンケンの末、割と新人で若いNくんが一人で全員分の買い出しに行くことになりました。夜中とはいえまあコンビニは近いし 男だし まあ何も問題はないだろうと思って送り出したのですが・・。

10分経ち 20分経ち・・なかなか帰ってきません。「品物がなくて苦労してんのか」「まさか迷うわけないよな この近さで」

仕事場でもそろそろ「おかしいな」とみんなが感じ始めていました。30分経ち 40分が過ぎる頃・・作家さんのケータイが鳴り響きます。出てみるとNくんのか細い声が。

 

Nくん「すいません・・あの・・あの・・」

Oさん「どうしたのNくん、随分遅いじゃん。みんな心配してるよ。迷ったの?それとも弁当なかった?」

Nくん「いえ、あの・・その・・」

煮え切らない返事のNくん。すると突然電話の向こうから野太い声が。

 

「練○警察署のものです」

 

Oさん「・・・・は?」

 

どうやらNくん、生まれて初めての「職務質問」ってヤツに引っかかってたらしいのです。あまり積極的に何かを発言するタイプではなさそうなNくん、警察官の質問にもおどおどした表情で小声で応対していた姿が、どうも警察官には怪しく見えたらしく割と強い口調で迫られてたようなのです。しかも悪いことにその状況に完全にビビってしまったNくん、こともあろうにその場からダッシュで逃げようとしたらしい のです。

いや気持ちは分かりますがそんなことしたら余計怪しまれるのは必至です。すぐに捕まり質問攻め。一応漫画の仕事と説明したそうですが、外部の人には理解されにくいんですよねこの仕事。結局作家さんに電話し身分を証明してもらうハメに。

ホントにすぐ近くだったため作家さんが外へ出て迎えに行きました。 作ったばかりの名刺を警察官に渡して説明し、ようやく解放。

 

Oさん「名刺を仕事関係以外の人に渡したのは初めてで、それがまさかおまわりさんだとはね」と苦笑い。Nくんは恐縮しきりでした。

 

作業初日にある意味「伝説」を残したNくん。 これ以降すっかりこの仕事場での「いじられキャラ」として定着していきました・・。

 

 

次は大手出版社での新連載でありがちな、しかし私にとっては新たな発見となった事柄について紹介します。

 

つづく

(この体験記は不定期更新となります。次に続いたり、しばらく後だったりします。ご了承ください。すぐ続きがお読みになりたい方は、こちらをクリックしてください。)

大手ならではの作品作り? メリットとデメリット アシスタント体験記25話

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